カレンダー機構のメカニズム
カレンダー機構にはいくつか種類がある。もっとも単純なのは、31日表示のディスクを使った「デイト」で、そこに週表示が加わるのが「デイデイト」。それ以上の複雑機構の詳細は下段に譲るが、驚くべきはその全てが歯車を使ってプログラミングしているところにある。
もっとも複雑なパーペチュアルカレンダーは、3月が31日までで4月は30日までという「月の大小」だけでなく、閏年まで把握して動くという上級のカレンダー機構。これを可能にしているのは、暦のデータを組み込んだ「48カ月ディスク」という歯車。
歯の刻みの深さで月ごとの日数が記録され、さらに4年ごとにやってくる閏年だけは2月が29日になるように設定されているのだ。ちなみにグレゴリウス暦では2100年は閏年にならないので、その際だけはカレンダーを修正する必要がある。
とはいえ80年以上も未来のことなので、子や孫にしっかり伝えておくか、遺言状に明記しておく必要があるだろう。それくらい息の長い機構なのである。
パーツ点数も多く、繊細な機構ではあるが、近年では構造の簡略化によってカレンダーの逆回しが可能になったり、薄型化が進んだりと熟成を重ねている。時計業界ではかなり古典であるカレンダー機構だが、まだまだ進化の余地はあるのだ。
AUDEMARS PIGUET
ロイヤル オーク パーペチュアル カレンダー
オーデマ ピゲが得意としてきたパーペチュアルカレンダーと、“ラグジュアリー・スポーツウォッチ”の原点であるロイヤル オークという、二つのレガシーを融合させた。特殊素材で精悍にまとめた。自動巻き。ブラックセラミックケース。ケース径41㎜。1058万4000円 オーデマ ピゲ ジャパン 問03-6830-0000
パーペチュアルカレンダーはロマンティックな機構ゆえ、時計のプロポーションはなるべく薄くて繊細な方が良い。オーデマ ピゲの場合は、薄型ムーブメントの傑作Cal.2120をベースとするCal.5134を採用。部品点数は374個もあるのに、厚みは4.31㎜しかない
何世代にも渡って使える
パーペチュアルカレンダー
閏年の有無まで計算して動く、最高峰のカレンダー機構。複雑なカレンダー表示をまとめるために針数が多くなり、表示も複雑になる。繊細なパーツをたくさん使っているため、カレンダー変更には細心の注意が求められる。
IWC
ダ・ヴィンチ パーペチュアルカレンダー
8時位置には4桁式の西暦表示、そして12時位置にはクロノグラフの同軸積算計やムーンフェイズまで備える高機能モデル。ケースは43㎜とやや大き目だが、可動式のラグを使っているため、腕へのフィット感もよい。自動巻き。SSケース。ケース径43㎜。338万円。IWC 問0120-05-1868
費用対効果抜群の実用機構
アニュアルカレンダー
月の大小を計算して動く上級カレンダー機構。ただし閏年の有無は判断しないので、毎年3月1日だけは自分でカレンダーを調整する必要がある。パテック フィリップが考案し、1996年に特許を取得した実用性の高い機構。
PATEK PHILIPPE
年次カレンダー搭載クロノグラフ Ref.5960/1A
3つの小窓で表示するアニュアルカレンダーは見やすくて実用性も高い。カレンダーを上に寄せて生じたスペースに、同軸式のクロノグラフ積算計が収める。自動巻き。SSケース。ケース径40.5㎜。556万円 パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 問03-3255-8109
必要十分の性能を持つ
コンプリートカレンダー
月、曜日、日付の3種のカレンダー表示を備えるのがコンプリートカレンダー。月の大小には対応せず、月頭ごとに細かい修正が必要になるが、その分価格は控えめ。ムーンフェイズが加わると“トリカレムーン”と呼ぶ。
VACHERON CONSTANTIN
フィフティーシックス・コンップリートカレンダー
1956年モデルを参考にした新コレクションで、特徴的なララグのデザインは、ブランドのアイコンであるマルタ十字を模している。このモデルは針式の日付表示がアクセントになっている。自動巻き。SSケース。ケース径40㎜。260万円。ヴァシュロン・コンスタンタン 問0120-63-1755
Photographs:Kurimura Noboru
2018年3月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)