「時計大好き」のあなたも、来春はぜひスイス・ジュネーブへ! 参加型シティイベントに進化した世界最大の時計フェア
パテック フィリップやロレックス、カルティエ、ヴァシュロン・コンスタンタン、IWC、ジャガー・ルクルト、パネライ、そして日本のグランドセイコーなど、世界トップクラスの時計ブランドが集まって、その年の新作時計を発表するスイスの時計フェア。時計好きの方ならご存知かもしれないこの、年に1度だけの「世界時計祭」。それが毎年春に開催されている「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ」(略称WWG)です。
今年2024年は4月9日から15日の7日間開催されたこのイベント。新進&注目ブランドも含めて54の時計ブランドが新作時計をそれぞれ、趣向を凝らしたブースで展示。世界中から5万人近い人々が来場。また同時にジュネーブ市内ではさまざまな時計ブランドが新作展示会を開催しました。
そしてこの世界No.1の時計フェアは今年、魅力的な進化を遂げました。かつての時計業界のプロ向けのクローズドなイベントから、時計に興味をお持ちの方なら、子どもから大人まで誰もが楽しめる一般参加型のイベントになったのです。どのように変わったのか、その進化を具体的にご紹介しましょう。
まずジュネーブ空港に隣接するパレクスポ国際見本市会場で行われた、時計ブランドの新作展示「サロン・イベント」は、火曜日からの7日間の開催期間のうち、オンラインで入場チケットを購入すれば入場できる一般公開日が2日間から1日増えて3日間に。しかも2日間は週末の土曜日、日曜日。つまり一般の人々を積極的に受け入れているのです。そしてこの3日間、出展ブランドの中には、ブースを訪れてきた一般の来場者に“お土産”を配るところもありました。
そしてジュネーブ市街では、さまざまな「シティ・イベント」が開催されました。そのなかでも“時計が好きなひと”にとって見逃せないのが、700年以上にもなる機械式時計の過去から現在の歴史が一望できる「パテック フィリップ ミュージアム」など時計関連施設の見学ツアー。さらに旧市街のローヌ通りとその周辺にある「パテック フィリップ」や「カルティエ」「ヴァン クリーフ&アーペル」など老舗&名門時計ブランド、時計店の“オープン・ブティック”企画です。こうしたお店はふだんなら顧客以外は入りにくい“敷居のとても高い”場所。でもWWGの開催期間内、この企画に参加していることを示す看板が店頭にあるお店なら、誰でも気軽に訪れることができます。
加えてこのエリアでは1日だけですが昨年と同様に、湖沿いの広場で音楽イベントも開催され、集まった人々で盛り上がりました。またそのすぐ近く、レマン湖につながるローヌ河の中洲に設けられた特設テントでは、子どもから大人まで楽しめるイベントが今年初めて開催されました。ここで行われたのは、時計をテーマにした子どものための「お絵描き教室」と、スイス各地にある時計学校の生徒たちが先生役を務める「時計師体験教室」です。これも時計に興味のあるひとには見逃せません。
こうした時計フェアの“劇的な進化”の背景には、WWGを後援する地元のスイス・ジュネーブ市の観光戦略があります。そもそもジュネーブは、16世紀半ばにスイスで初めて時計作りが始まった場所。また、ジュネーブは宗教改革運動の中心地で、プロテスタントが迫害されたフランスから逃げてきた時計師たちの手で時計作りはさらに盛んになり現在に至ります。ジュネーブ市はこの歴史を踏まえて「時計」を大事な観光資源として位置付けているのです。ですから来年のWWGは“時計好きのひと”にとって、さらに魅力的なものになるでしょう。あなたも来春、ジュネーブ観光の一貫としてWWGを訪れてみては?
ジュネーブ国際空港に隣接する国際展示場パレクスポで開催された「IN THE SALON」の一般公開日。54の時計ブランドの、趣向を凝らした新作展示を鑑賞するために、多くのひとが行列しました。また会場には、時計の新技術を展示する「THE LABO」や時計をテーマにした写真展も。会場内の各所に配置されたテーブルでは有料でドリンクも提供され、くつろぐことができます。
ジュネーブ市内で行われた「IN THE CITY」イベントのひとつ、“オープン・ブティック”企画。上の看板の出ているブティックなら、誰もがお店を気軽に見学できます。
WWGのCEOから「ぜひ訪れて欲しい!」と言われたのが、ブティック街のすぐ近く、ローヌ河の中洲に儲けられた特設テントで行われた「IN THE CITY」の新企画。「時計師体験教室」のほか、小さな子どもたちのための「文字盤お絵かき教室」や、記念写真の自撮りマシンも設置されるなど、誰もが楽しめる展示でした。
Text:Yasuhito Shibuya
2024年6月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)