Vacheron Constantin SINCE 1755

時計は時を知る道具であると同時に、時を超越する芸術品だ。時計職人の叡智と宝飾職人の職人技。このふたつの融合から生まれる芸術的な時計は、持つ人の時間を豊かに彩り、過ぎ行く時を永遠の一瞬に変える力を持つ。

そしてヴァシュロン・コンスタンタンは、1755年の創業から現在まで約260年以上も、スイス・ジュネーブで芸術的な時計を一貫して作り続けてきた特別なウォッチメゾンだ。

1541年に宗教改革者ジャン・カルヴァンの手でジュネーブに神権政治が確立されると、この地にはユグノーと呼ばれたフランスの改革派キリスト教徒(プロテスタント)たちが、宗教的な迫害を逃れて移住してきた。

彼らの多くは時計職人や宝飾職人など、当時最先端の知識と技術を身に付けた人々であり、彼らの活躍でジュネーブはヨーロッパ屈指の時計、宝飾産業の中心地となっていく。若干24歳にしてメゾンを創業したジャン=マルク・ヴァシュロンは、そんなジュネーブが生んだ偉大な時計師のひとりだった。

彼の芸術的な時計作りへの情熱は、息子のアブラアム・ヴァシュロン、その息子ジャック・バルテルミー・ヴァシュロンに引き継がれ、優れたビジネスマンだったフランソワ・コンスタンタンとのパートナーシップ、さらに天才時計技師ジョルジュ=オーギュスト・レショーによる革新的な製造技術の開発・導入を経て、ヴァシュロン・コンスタンタンは不動の名声を確立し、現在に至っている。

どの製品も芸術的だが、中でも素晴らしいのが最高峰の宝飾技術を駆使して製作される「メティエ・ダール(芸術工芸)」コレクションと、最高峰の時計技術が最高峰の宝飾技術と融合して生まれるコンプリケーションモデル。

今年2014年のメゾンは、機能を妨げない範囲で、優れた職人の手作業で文字盤やムーブメントにエングレービング(中抜き・彫刻加工)を徹底的に施し、時計という機械の立体的で緻密で神秘的な美しさを際立たせたスケルトンモデルにフォーカス。

この2つのカテゴリーで、これまでにない繊細なディテールを持つ芸術的なスケルトンモデルを数多く製品として世に送り出した。19世紀の名建築を彷彿させるその神秘的な美しさをあなたにも実物で自分の目で」体幹して頂きたい。

マルタ・トゥールビヨン・スケルトン 機械式時計の最高精度を追求した究極のメカニズム、トゥールビヨン機構とスケルトンデザインの美しさを両立させた芸術的なコンプリケーションモデル。/ヴァシュロン・コンスタンタン

1912年に登場したメゾン初のトノー型モデル。アールデコ時代のエレガントなデザインは男女を問わず垂涎の的となった。現在の「マルタ」コレクションの原点となった歴史的にも貴重なタイムピースだ。

レマン湖から流れ出すローヌ川の中州にあった本社が、通りを挟んだ現在の場所に拡張された当時の写真。設計者はジュネーブのオペラハウスを設計したジャック・エリゼ・ゴス。現在もヴァシュロン・コンスタンタンのブティックがある。

同社の機械式モデルはジュネーブ州が定める伝統的な製造方法と品質・精度基準をクリアした証「ジュネーブ・シール」を取得。2011年の基準改定に伴い時計全体が認証の対象となり、現在はムーブメントに加えてケースにも刻印が入っている。

Photos by Noboru Kurimura
Text by Yasuhito Shibuya

2014年9月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

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