Cartier サヴォアフェールが生み出す優雅なる美の点描
カルティエの「パンテール」は、フランス語で「豹(ヒョウ)」を示すメゾンを代表するモチーフ。最初に登場したのは1914年、女性用ウォッチにダイヤモンドとオニキスで豹柄を表現したことからだった。その後、1930年代後半にミューズであるジャンヌ・トゥーサンが取り組んでいたファウナ&フローラ(動植物)のジュエリー制作で、豹のフェイスや四肢、豹柄を使ったモチーフを発表。それが瞬く間に評判となり、1949年にはウインザー公爵夫人が152.35カラットのサファイア・カボションの上にダイヤモンドで創られた豹を載せたブローチを注文。それは現在でもカルティエの代表作のひとつになっている。このモチーフを腕時計に応用したコレクションが「パンテール ドゥ カルティエ」ウォッチである。
この成り立ちを考えると、「パンテール ドゥ カルティエ」を抜きには語れない。サヴォアフェールとはSAVOIR(知識)とFAIRE(技術)を合わせたフランス語特有の単語で、一般的には伝統的な匠の技を示すが、カルティエでは「クリエイティビティと技術の対話」と意味する。デザイナーや職人たちとの絶え間ない「サヴォアフェール」が行われることによって、カルティエの芸術的な「パンテール」が生み出されるのだ。
例えば、ブレスレット。豹の毛並みのような滑らかさで腕にしなやかに沿うように仕立て、小さなコマは丸みを持たせることで周囲の景色が映り込み、ドラマチックな存在感を演出する。またジュエリーのセッティングでは、宝石をひとつひとつ丁寧にカットし、それを分類してジュエリーがお互いに抱き合うようにセッティングされている。
今年の新作にもサヴォアフェールの本領が発揮されている。ダイヤル中央にスクエアベゼルと連動するように配置された、8列×8列からなる時分針の軸部分を除いたダイヤモンドセッティングだ。一体化したケースとしなやかなゴールドブレスレットの中で、ひと際目を引く存在感となっている。
この中央のブリリアントカットダイヤモンドには、カルティエが新たに開発した「クルー セッティング」と名付けた釘(クルー)を思わせるトップが磨かれた4本の爪によるセッティング手法を採用。拡大写真を見るとよくわかるが、ダイヤモンドを留める爪はゴールドビーズのようになっていて、それ自体が装飾の一部となっている。これまで目立たぬように工夫を凝らしていた爪を、装飾としてあえて露出させるという発想の転換でダイヤモンドをいっそう華やかに魅せることに成功した。
ウォッチとしての知的な上品さに、ジュエリーとしての華やかさと優雅さを兼ね備える新しい「パンテール ドゥ カルティエ」。カルティエの飽くなき美の追求によってたどり着いたサヴォアフェールの成果といえるジュエリーウォッチだ。
パンテール ドゥ カルティエ
ベゼルの控えめなビス、ふっくらとしたケースサイド、そして丸みを帯びた小さなコマを組み合わせたなめらかなブレスレットが特徴の「パンテール ドゥ カルティエ」。ベゼルの周囲とダイヤル中央にはダイヤモンドをセッティングして、華やかなジュエリーウォッチに仕立てた。ダイヤル中央には、「クルーセッティング」と名付けられた新しいダイヤモンドセッティングの手法を採用し、カルティエのサヴォアフェールを見せつけている。18KPGケース。クォーツ。ケースサイズ30.3×22mm。455万4000円。㉄カルティエ カスタマー サービスセンター ☎︎0120-1847-00
Photograph:Takeshi Hoshi
2024年6月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)