Horlogerie Interview A.LANGE&SÖHNE PR Director Arnd Einhorn
アーンド・アインホーン A.ランゲ&ゾーネ本社 PRディレクター 1966年ドイツ・ライプツィヒ生まれ。ライプツィヒ大学でドイツ語学、ドイツ文学、心理学、法学修士課程を終了した後、新聞社、TV業界などで、PR、政治経済編集を担当。1997年、当時A.ランゲ&ゾーネの社長であり再生の立役者、故ギュンター・ブリュームラインの求めで現職に。
「これはひとつの道程に過ぎません」
1990年、第二次世界大戦と東西冷戦による半世紀の眠りから奇跡的に復活。1994年、芸術的でドイツ的な復活第1弾コレクションで、世界中の時計愛好家を狂喜させたA.ランゲ&ゾーネ。あの復活から20年余。今年、ドイツ・ザクセン時計の名門は、新たな一歩を踏み出した。
1月のS.I.H.H.でブランド史上初の「グランド・コンプリケーション」モデルを発表したのだ。 「これまでにない、新しいショーを始める気持ちです」と先日、ついに完成した製品をお披露目するために来日した同社PRディレクターのアーンド・アインホーン氏は満面の笑みで語った。
モノプッシャータイプだがスプリットセコンドメカニズムを備え、しかもフドロワイヤント(1/5秒計付き)というクロノグラフ機構をはじめ、他のブランドとは一線を画したスペックは圧巻。なかでも特筆に値するのは、ミニッツリピーターの音色の素晴らしさだ。
「私たちが今、持っている技術の粋を集めて作り上げたのがこのグランド・コンプリケーションです。開発には全部で7年間の時間を要しました。できることはすべてやった、と言っていいでしょう。しかしこれが終わりではありません。
さらに次のモデルの開発をすでに進めています。時計コレクターの皆さんが私たちに何よりも期待しているのは、職人技を駆使したドイツ的で芸術的なコンプリケーションモデルです。その可能性の追求はまだまだ限りがありません。
私たちは立ち止まってはいけないのです」とはいえ、究極の複雑時計であるグランド・コンプリケーションの完成で、A.ランゲ&ゾーネの時計作りがひとつの頂点を迎えた、転機を迎えたのは間違いない。 ファンにとって、何よりも気になるのはこれからの製品作りの方向性だ。
デザイン等で大きなシフトチェンジはあるのだろうか。 「グランド・コンプリケーションは当社の歴史の中でも特別なモデルですが、あくまでひとつの道程でしかありません。
コンプリケーションモデルであっても、私たちの時計はこれからも、これまでと同じようにドイツ的な控え目さを失うことはありません。A.ランゲ&ゾーネは、見た目で人にアピールする“見せるための時計”ではありません。中身で、実質でお選び頂く機械式時計なのです。
これからも、ファンの皆様に納得頂ける、独自の道を歩んでいきます」
新生A.ランゲ&ゾーネの歴代モデルの頂点「グランド・コンプリケーション」。グランドソヌリ&プチソヌリ機能付きミニッツリピーター、フドロワイヤント付きスプリットセコンドクロノグラフ、ムーンフェイズ付き永久カレンダーの複雑機能をすべて搭載。世界限定6個。
ブランドの“顔”ランゲ1の最新モデル「グランド・ランゲ1」。
10月にプレス関係者向けに行われたグランド・コンプリケーションのプレゼンテーションでは、同時に「ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー“ハンドヴェルクスクンスト”」(写真上・左)をはじめ、過去のブティック限定モデル(コレクター所有)も公開された。どのモデルも、時計愛好家にとっては思わず目が釘付けになって心が奪われる、ランゲだけの特別なオーラを放っていた。
Photo by Noboru Kurimura
Text by Yasuhito Shibuya
2013年11月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)