【CARTIER】アクセサリーの感性をプラスした可憐なバングルウォッチ

男性用の腕時計は、1904年にブラジルの富豪であり飛行家のアルベルト・サントス=デュモンの依頼によって、ルイ・カルティエが制作した「サントス」ウォッチがあまりにも有名。しかし、カルティエはそれ以前から腕時計を制作しており、最初に登場するのは1888年から。ブレスレットにダイヤモンドを配した女性用のブレスレットウォッチであった。これは女性用の装身具として、当時は腕時計と認識されていなかったようで、ブレスレットにダイヤモンドやルビーなどのジュエリーと同列に小さな時計の文字盤をセットするという選択肢のひとつに過ぎなかった。
その後、「サントス」ウォッチによって実用性を高めた腕時計で、メンズ・レディスを問わず腕時計というジャンルを確立させたカルティエであるが、レディスラインには一貫してエレガンスかつ普遍性を併せ持つ装飾的なウォッチを提案してきた。その代表格である「ベニュワール」はオーバル型の柔和なケースフォルムが女性らしい美しさを湛えている。
「ベニュワール」が誕生したきっかけは、1910年にロシアのマリア・パヴロナヴナ大公妃のためにルイ・カルティエが制作したペンダントウォッチだった。パヴロナヴナ大公妃はパリやニューヨークに住むなど、当時の女性としてはハイセンスの持ち主として知られる存在。パリ時代にはココ・シャネルと知り合い、パヴロナヴナ大公妃のデザインした刺繍のインスピレーションを元に、シャネルが服のデザインをしたこともあったという。
そんな彼女はオーバル型のペンダントウォッチを一目見て、ヨーロッパで広く見られる浴槽に似ていたことから「ベニュワール(フランス語で浴槽)」は誕生した。1912年にはリストウォッチとしてカルティエは一般販売を開始。こうして生まれた美しいフォルムのレディスウォッチは、1958年に「オーバル サントレ ウォッチ」としてコレクションを確立し、その後1973年に「ベニュワール」と名付けられ、カルティエのレディスコレクションのみに展開するシグニチャーウォッチとなる。この美しいオーバル型ウォッチは、カトリーヌ・ドヌーブ、ロミー・シュナイダー、ジャンヌ・モローなどのセレブリティたちを次々と魅了していった。
その最新作が、ジュエリー感覚でまとうことができるバングルタイプの「ベニュワール」だ。コレクションにはオーバル型ケースに合わせるレザーストラップやゴールドブレスレットも展開するが、華奢なゴールドのバングルはぷっくりとした丸みのあるベゼルのデザインにも似て、アクセサリーとしての華やかさを演出する。ワンタッチで開閉できるバングルの機能性には、ジュエラーとしてサヴォアフェールも注ぎ込まれる。カルティエらしい「ビジュー(装身具)」としてのダイヤモンドも映えるウォッチといえるだろう。装いの楽しみやスタイリングの幅を広げてくれるカルティエのレディスコレクション。洗練されたプロポーションを持つ「ベニュワール」はその最前線にいる。


ベニュワール
滑らかな曲線が美しいケースフォルムの形状に似たバングルと組み合わせ、アクセサリーとしての表情を高めたバングルウォッチ。ケースの6時位置の付け根にバングルを開閉できるスナップを備え、ジュエラーとしての機能性も発揮する。文字盤周囲に加え、リューズトップにもダイヤモンドがセットされており、輝きと気品をプラスする。クォーツ。18KPGケース。ケースサイズ31.4×23.1mm。392万400円。㉄カルティエ カスタマー サービスセンター
Tel.0120-1847-00
Photographs:Noboru Kurimura
2025年3月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

