de GRISOGONO トップジュエラーが生み出す、エキセントリックな風貌
近年、ダイヤモンドがジュエリー市場を大きく賑わせている。信じがたいほど巨大なダイヤモンドがオークションや入札会に登場しては、記録的なプライスをつけているのだ。そんな中で、ひと際注目度が高かったのが、昨年アンゴラで採れた404.2カラットの原石。
最高級のクオリティを持っていると推測され、鶏の卵よりもひとまわり大きい長径約7cmのサイズ。この稀有な原石を手に入れたのは、スイスのジュエラー、ドゥ グリソゴノ。原石のプライスは1600万ドル(約18億円)とも噂されていた。
そのダイヤモンド原石は1年以上の月日をかけてカットされたのだが、鑑定結果が驚異的だった。163.41カラット、Dカラー、フローレスというトップ・オブ・トップのクオリティだったのだ。Dカラーとは、無色という意味。
フローレスは石の内外にキズやヒビ、内包物を含まず、完全に無傷であることを意味する。文字通り完全無欠のこのダイヤモンドを、ドゥ グリソゴノは壮麗なネックレスに仕立て、クリスティーズのオークションに今秋出品し、旋風を巻き起こした。
それほどのジュエラーであるからこそ、ドゥ グリソゴノの時計も一筋縄ではいかない。新作「エッチェントリカ」は建築的なフォルムのケースにダイヤモンドをびっしりとセットし、文字盤の下半分に寄せたユニークなアラビア数字の配置で、強烈な印象を醸し出す。
伝統的な時計のデザインコードを破壊するかのような設計。ブランド創業者にしてクリエイティブディレクターでもあるファワズ・グルオジは、かつて「ドゥ グリソゴノは1本目に買う時計ではない」と語っていたが、これは超級ダイヤモンドを購入できるようなスーパーリッチピープルが、遊び心でファッショナブルに楽しむ時計なのだ。
欧米の上流階級では、すでにドゥ グリソゴノがある種の符牒になっている。このメゾンの時計やジュエリーを持っていることが、仲間のしるしであると。「エッチェントリカ」の異風のデザインは、そうした符牒にもってこいではないか。
エッチェントリカ S02
2017年のバーゼルワールドで発表された、官能的なフォルムの新作時計。いくつものサークルが入れ子状に重ねられ、不思議な立体感を漂わせている。ダイヤモンドは計1064石、計7.35カラットを惜しげなくセッティング。リューズには、このメゾンのアイコンともいえるブラックダイヤモンドをひと粒あしらっている。ガルーシャストラップも、かつてドゥ グリソゴノが牽引してワールドトレンドにまで押し上げたことから、メゾンの象徴的な存在として知られている。自動巻き。ケース径39.70mm。18KWGケース×ダイヤモンド×ブラックダイヤモンド、ガルーシャストラップ。1017万円。ムラキ 問03-3273-0321
Photographs : Fumito Shibasaki Text : Keiko Homma
2017年11月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)