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【PATEK PHILIPPE】奥行きを表現する グラデーション文字盤の永久カレンダー

昨今、流行しているグラデーション文字盤は、退色を連想させるヴィンテージの文脈で語られることが多い。クラシックスタイル人気に応えているものといえるだろう。一方で、グラデーションには輪郭をぼかすことで奥行きを感じさせる遠近法の効果もある。時計では文字盤の中心をぼかすと手前にある針に遠近法が作用し、視線が誘導されて視認性が高まる。

この効果を狙ってグラデーションダイヤルを採用したのが、パテック フィリップの「レトログラード日付表示針付永久カレンダー 6159G」だ。文字盤にはグレーがかった半透明のメタライズ・サファイアクリスタルが採用され、クリスタルガラス越しにカレンダーの回転ディスクなどのメカニズムを鑑賞できるようになっている。このメタライズ・サファイアクリスタルは、外周に向かって濃くなっているが、一般的なグラデーションのように外側からスプレーワークによって着色されたものではない。もともと半透明のブラック文字盤をレーザーで中央から色を抜いて仕上げたものだ。通常とは逆のアプローチでぼかし感を与えて、さらに半透明にすることで、いっそう奥行きをもたせて遠近感のある文字盤に仕上げた。

搭載される永久カレンダー機構はパテック フィリップのお家芸で、小窓表示、サブダイヤル表示などカレンダーの表示方法が異なるデザインを取り揃える。とりわけこの6159モデルのデザインはユニークさが際立っていて、文字盤中央に最大270度回転するレトログラード式の日付表示が大胆に配置され、曜日・月・閏年を小窓で表示する。

レトログラード式永久カレンダーモデルの歴史は古い。1937年に登場した96モデルの後継機とされる「No.860 182」をはじめ、5050モデル、5159モデル、5160モデル、そして本作の6159モデルへと続く。これらの歴代モデルはダイヤルやケースに手仕上げのギョーシェ装飾が施されるモデルが多く、パテック フィリップの永久カレンダーの中でも、特別なコレクションといえる。本作でも、ベゼルとケースバックの両面に施されたクルー・ド・パリのギョーシェ装飾をみれば、特別であることがわかるだろう。

かつて巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチは、絵画の基本である輪郭線を描かずにグラデーションによって描き出す「ソフマート」という遠近法の技法を生みだした。初代の「No.860 182」では日付・時・分と区分された文字盤を備えていたが、本作ではグラデーションによって時刻やカレンダー表示をはっきりと知覚できるようになっている。カラーやサイズで視認性を高めるのではなく、グラデーションの効果によってパテック フィリップは、ルネッサンス絵画の技術を見事に腕時計に昇華させたのである。


レトログラード日付表示針付永久カレンダー 6159G
2023年発表の「グランドコンプリケーション 5316/50P」に続き、半透明なメタライズ・サファイアクリスタルを文字盤に採用。透けている中央部分からは搭載されるCal.26-330 S QRが見え、グラデーションによって外周に向かって濃くなる部分ではアワーマーカーやミニッツトラックがくっきりと目立つ。オフィサータイプの直線ラグを持つ先代機から、カラトラバケースに変更され、ベゼル及びケースバックにはクルー・ド・パリ装飾が施される。自動巻き。18KWGケース。ケース径39.5mm。1866万円。㉄パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109

Photographs:Noboru Kurimura

2025年9月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

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