ラグジュアリーが加速する パイロットウォッチ
パイロットをサポートする計器として生まれた時計は、テクノロジーの進化と共に役目を終えたはずだった。しかし現代のパイロットウォッチは豪奢な進化を始めた。
ゴールド素材にエナメル文字盤も!ますますラグジュアリーなスタイルへ
機能から導き出された理論的な時計は、どうしても“こうあるべき”という業界的ルールに押し込められてしまう。しかしパイロットウォッチは、もはやその役目を終えている。電子デバイスが支配するコックピットの中では、機械式時計が活躍する余地は存在していないからだ。
それが功を奏した。機能性という呪縛から逃れ、パイロットウォッチは自由になったのだ。新たに目立ってきたのが、ラグジュアリー・パイロットウォッチというスタイル。
パイロット用の計器という本来の役目を終えたのは事実だが、視認性や耐久性、耐磁性などの基本性能が“腕時計の理想像”であることは変わらない。骨格がしっかりしているので、ラグジュアリーなアレンジを加えても、ブランドの個性が残るのだ。
進化の一例が「ゴールドケース」だ。実用時計の時代には考えられなかったラグジュアリー仕様だが、パイロットウォッチ特有の大型ケースのおかげで存在感を増し、アクセサリー効果は抜群である。
タイムゾーンを超えて大陸間を移動する長距離便パイロットのイメージを重ね合わせた「トラベルウォッチ」も然り。そもそも視認性の高いデザインなので、時差調整機能が加わっても、読みやすさは損なわれない。
時計はアクセサリーでもあるが、積み重ねてきた歴史に対しては敬意を払いたい。そういう思考を持っていれば、ラグジュアリー化するパイロットウォッチこそが最適な選択肢だ。
IWC
ビッグ・パイロット・ウォッチ “スピットファイア”
80年前に誕生したパイロットウォッチのスタイルを継承するIWC。シンプルな表示と大きな針、操作性に優れる大型リューズなどは、一貫して変わらぬ機能美に満ちている。レッドゴールドケースモデルは、グレーのサンレイダイヤルを組み合わせることで上質にまとめている。自動巻き。18KRGケース。ケース径46㎜。IWC 問0120-05-1868
コックピット内が電子制御になった現在でも、パイロットにとって腕時計は最も信頼できる相棒だ。
PATEK PHILIPPE
カラトラバ・パイロット・トラベルタイム Ref.5524
1936年製のパイロットウォッチをベースに、二本の時針を使って二カ所の時刻を表示するトラベルタイム機構を加えた。サイドのプッシュボタンで時針をローカルタイムに合わせ、中空針がホームタイム表示。ナイト&デイ表示も装備。自動巻き、18KWGケース、ケース径42㎜。パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 問03-3255-8109
BREITLING
クロノマット44 カーボンダイヤル
言わずと知れた、現代的パイロットウォッチの代表格。ボリュームのあるケースに丹念にポリッシュ仕上げを施し、美しい存在感を作る。このモデルは航空機にも用いられるカーボン素材をダイヤルに使用した特別仕様で、精悍さがぐっと引き立っている。自動巻き。SSケース。ケース径44㎜。ブライトリング・ジャパン問03-3436-0011
BREGUET
タイプ Ⅻ
ブレゲでは、フランス海軍航空部隊のために1950年代にパイロットウォッチを製作している。その伝統を受け継ぐこのモデルは、10振動の高速ムーブメントを搭載し、さらに第二時間帯表示も備える高機能モデル。ローズゴールドケース&ブレスの華やかさは別格だ。自動巻き。18KRGケース。ケース径44㎜。ブレゲ 問03-6254-7211
ZENITH
パイロット タイプ20 グランフー
フランス航空史を航空計器という形で支えたゼニスは、時計業界で唯一ダイヤルに「PIL
OT」と明記できる名門。その時代の懐中時計をイメージし、彫金仕上げのベゼルにエナメルダイヤルを組み合わせた。手巻き。サファイアクリスタルケース。ケース径60㎜。1782万円。LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス 問03-5524-6420
BELL & ROSS
ヴィンテージ BR 126 アエロナバル
端正なデザインで高評価を得ているパリブランドらしく、ネイビー×ゴールドという洗練された配色が特徴。これは海軍将校が着用する礼装をイメージしたものだ。さらにムラ加工を施したレザーストラップも組み合わせることで、腕元をスタイリッシュにまとめてくれる。自動巻き。SSケース。ケース径43㎜。オールブルー 問03-5977-7759
Photographs_NOBORU KURIMURA
2016年11月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)