創業者生誕200周年の節目に新工場が完成。 新たなステージに立った、A.ランゲ&ゾーネ
今、最も注目したい時計ブランドといえばドイツ時計の頂点、A.ランゲ&ゾーネ。創業者生誕200周年を迎えたこの夏、待望の新工場がついに完成・稼働した。新時代を迎えた名門は何を目指すのか。PRディレクターにブランドの未来を聞いた。
2015年2月18日、創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲの生誕200周年を祝ったドイツ時計の名門A.ランゲ&ゾーネ。かねてからドイツ・グラスヒュッテにある本社の向かい側に建設中だった新工場も、この夏についに完成。
去る8月26日には、ドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏、ドイツ・ザクセン州知事スタニスラフ・ティリッシュ氏の臨席のもと、壮大な落成式が行われた。
グラスヒュッテの伝統的なスタイルに、機械式時計の技術史に新たなページを開く革新的なメカニズム。そして職人の手作業から生まれる宝石のような美しい仕上げ。
世界の時計愛好家を魅了するドイツ時計の最高峰ブランドは、何のためにこの新工場を建設し、これから何を目指すのか。1997年に同社に入社し、長くPRディレクターを務めるアーンド・アインホーン氏に聞いた。
「新工場を作った高級時計ブランドがメディアから必ず訊かれるのがその目的。特に『生産本数を大幅に増やすためでは?』という質問を今回、私たちも何度も受けました。しかし、私たちは生産本数を増やすために新工場を作ったのではありません。
いちばんの目的は労働環境の改善。ワークスペースを拡大し、空調を完全なものにして、時計師など製品の開発・製造に関わる人々が、より気持ちよく快適に仕事ができるようにすること。私たちの狙いは『量の拡大ではなく質の向上』です」
これまでの工場は狭く、また空調システムも不完全なため、決して快適とはいえなかったという。新工場では、ワークスペースは約5400平方メートルと一気に拡大。空調も地中熱を利用するヒートポンプを使った、環境に優しいゼロ・エミッションの最新の完全空調システムが採用された。温度も湿度も完璧に管理されるようなり、作業環境は大幅に改善された。
「今でも最高の品質を追求、達成していますが、これまでは労働環境に問題があり、時計師など働く人々に大きな負担がかかっていました。また生産工程の途中で、部品を人の手で野外に運び出して移動させなければならない、つまり生産効率という点でも大きな問題がありました。
しかし、新工場ではこの点が根本的に改善されました。労働環境と生産効率を改善することで、働く人々のモチベーションも一段と上がる。その結果、製品の品質もさらに向上すると私たちは確信しています」新工場が稼働してもA.ランゲ&ゾーネの時計作りの哲学は変わらないと、アインホーン氏は力強く断言する。
「独創的で美しく精密なメカニズムと最高の職人技。私たちはこの2つを心から愛し、その価値を理解して下さる方々のために時計を作っています。この基本姿勢は変わりません。今ある5つのコレクションを充実させる。
それぞれのコレクションで毎年必ずひとつは魅力的な製品を発表する。そのことをお約束します。1月のS.I.H.H.での新製品にもぜひご期待ください!」
PR Director Arnd Einhorn
アーンド・アインホーン。A.ランゲ&ゾーネ・PRディレクター。テレビ、新聞での記者経験を経てA.ランゲ&ゾーネの復興を率いた故ギュンター・ブルムライン氏にスカウトされ1997年に入社し、広報宣伝活動に従事。その復興から発展の過程を最も熟知しているひとり
女性のための最新作「リトル・ランゲ1」。マザーオブパール文字盤と4分の3プレートのムーブメント。ふたつの美しさが楽しめる。手巻き。18KPGケース。ケース径36.1mm。¥3,650,000/¥3,760,000(18KWGモデル)
Photo/Toshimi Kimura Text/Yasuhito Shibuya
2015年11月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)