フェラーリ・モンツァSP1が東京でお披露目された

フェラーリの新しいビジネス「イコーナ」がスタートした。

フェラーリの「イコーナ」をご存じだろうか。イタリアのスポーツカーメーカー、フェラーリによる過去のアイコニックなモデルを現代的に再解釈した限定モデルのことだ。

第1弾が2018年9月に発表された「モンツァSP1」と「同SP2」である。「F1なみ」とフェラーリではいう、カーボンファイバー製のシャシーとボディを持ち、810馬力(810CV)の6.5リッターV型12気筒エンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動する。

フェラーリのスタイリングセンターが手がけたスタイリングは、ファンにはピニンファリーナが2000年に発表したスタイリングコンセプト「ロッサ」(2000年)を思い浮かべるかもしれない。しかし今回はここで書いたように、レースカーに準じた素材をふんだんに使うなど”実(じつ)”が伴うのが最大の特徴といえる。

実際にフェラーリ発表の数値はすごい。静止から時速100キロまでを2.8秒で加速、時速200キロまでだった7.9秒しかかからない。最高速は時速300キロ以上とされている。

ユニークなのはそれだけでない。大きな風防もルーフも持たない。風に関してはヘルメットをかぶってもいいのだが、フェラーリがこのクルマのために開発したバーチャルコクピットという技術が採用されているのだ。

これはコクピット前端部のボディにフェアリング効果をもった空力付加物を設けたものだ。それにより走行中は風が乗員の頭上を流れていくという。

2019年2月に東京にもモンツァSP1が持ち込まれた。流麗なラインを持ちつつ、力がみなぎるような面のボディにはクルマ好きなら目が釘付けになると思った。ドライバーの背後に50年代のレーシングカーのようなヘッドレストが設けられているのもユニークなスタイルだ。

スタイリングイメージの源泉となったのは1948年のレーシングカー「166MM」とフェラーリではする。バルケッタ(コンパクトで車体が低い小舟のようなスポーツカーのこと)というスタイルを確立したモデルだ。

今回のモンツァSP1もそのバルケッタ(小舟)的なスタイルを現代的に表現したものとされる。「F1を頂点としたフォーミュラドライバーでなければ体験できない異次元のオープンエア・スピードを味わっていただけます」とはフェラーリがホームページで発表している文言である。

全長4657ミリ、全幅1996ミリ、全高1155ミリで、車重はわずか1.5トンというモンツァSP1(およびSP2)は、限定500台で、2019年から生産される。あいにくすべて売り切れているそうだ。このクルマを買えた幸福なひとは……フェラーリから”招待”された(購買の権利を与えられた)ひとに限られるという。

小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。

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