フェラーリローマ

全長4656ミリ、全幅1974ミリ、全高1301ミリのクーペボディ

かつて、スポーツカーにはエレガンスが大事だった時代があった。そこにたちかえるようなコンセプトを、フェラーリが提案している。新型車「フェラーリ・ローマ」は、”古きよき”1950年代を連想させる美しいクーペだ。

イタリア人監督フェデリコ・フェリーニ(1920-93年)は、かつてチネチッタ(英語だとCinema City=映画都市)という大きな撮影所があり、にぎわっていたローマを舞台に「甘い生活 La Dolce Vita」(1959年)という名作をものにしている。

今回フェラーリがローマを発表するにあたって選んだキーワードはまさに「新しい甘い生活 La Nuova Dolce Vita」だった。クルマの発表会の会場には、いたるところにこの文字が躍り、上記のフェリーニの映画のシーンが映し出されていた。

ローマは、フロントエンジンで後輪駆動。伝統的なGTの成り立ちを踏襲している。「エレガンスを重視しました」と、デザイン統括のフラビオ・マンツォーニ氏がスタイリングの特徴を解説してくれたように、ミドシップのスポーツモデルのように派手な空力付加物は持たない。

車体はなめらかな面で構成されていて、リアには地面すれすれから開く独立したトランクルームのためのリッドが設けられている。フェラーリのコンセプトによると「2プラス」。

よくある2プラス2ではないのは、ひとが乗るには狭いけれど、荷物が置けたり、機能的なスペースが前席の背後に用意されているのを意味しているのだ。

エンジンは3855ccV型8気筒ターボ。最高出力は620CV(456kW)。ツインクラッチの変速機は8段になり変速タイミングが従来モデルより速くなっているという。

フェラーリのGTモデルには初の「サイドスリップコントロール6.0」や、ブレーキによって車体の動きを制御する「フェラーリ・ダイナミックエンハンサー」など、運動性能をより高めるための制御技術が盛り込まれている。

「ローマはフェラーリ初心者にも乗れます」。驚くようなことを語るのは、マーケティングと販売を統括するエンリコ・ガレリア氏。

「それどころか、スポーツカー初心者だって問題ないぐらい、乗りやすさを重視してセッティングしています。ポルトフィーノともコンセプトが異なり、フェラーリの間口を大きく拡げるモデルなのです」

価格を含めて詳細は現時点ではあきらかになっていない。20万ユーロ(税別)を少し超える、とローマでの発表会場でガレリア氏は語った。発売は夏前という。日本での発表は2020年春頃になりそうだ。

250GTベルリネッタ・ルッソ(1958年)や250GT 2+2(60年)といった歴史的なGTモデルの流れにあるスタイリングという

 

ダッシュボードまわりには液晶技術が多用されている

 

居心地のよさそうな室内(シートの背後にものが置けるスペース)

 

3855ccV型8気筒ターボエンジンは456kWの最高出力と760Nmの最大トルクを発生

 

低いところから開く独立したトランクを備えている

 

小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。

関連記事一覧