フェラーリローマ
かつて、スポーツカーにはエレガンスが大事だった時代があった。そこにたちかえるようなコンセプトを、フェラーリが提案している。新型車「フェラーリ・ローマ」は、”古きよき”1950年代を連想させる美しいクーペだ。
イタリア人監督フェデリコ・フェリーニ(1920-93年)は、かつてチネチッタ(英語だとCinema City=映画都市)という大きな撮影所があり、にぎわっていたローマを舞台に「甘い生活 La Dolce Vita」(1959年)という名作をものにしている。
今回フェラーリがローマを発表するにあたって選んだキーワードはまさに「新しい甘い生活 La Nuova Dolce Vita」だった。クルマの発表会の会場には、いたるところにこの文字が躍り、上記のフェリーニの映画のシーンが映し出されていた。
ローマは、フロントエンジンで後輪駆動。伝統的なGTの成り立ちを踏襲している。「エレガンスを重視しました」と、デザイン統括のフラビオ・マンツォーニ氏がスタイリングの特徴を解説してくれたように、ミドシップのスポーツモデルのように派手な空力付加物は持たない。
車体はなめらかな面で構成されていて、リアには地面すれすれから開く独立したトランクルームのためのリッドが設けられている。フェラーリのコンセプトによると「2プラス」。
よくある2プラス2ではないのは、ひとが乗るには狭いけれど、荷物が置けたり、機能的なスペースが前席の背後に用意されているのを意味しているのだ。
エンジンは3855ccV型8気筒ターボ。最高出力は620CV(456kW)。ツインクラッチの変速機は8段になり変速タイミングが従来モデルより速くなっているという。
フェラーリのGTモデルには初の「サイドスリップコントロール6.0」や、ブレーキによって車体の動きを制御する「フェラーリ・ダイナミックエンハンサー」など、運動性能をより高めるための制御技術が盛り込まれている。
「ローマはフェラーリ初心者にも乗れます」。驚くようなことを語るのは、マーケティングと販売を統括するエンリコ・ガレリア氏。
「それどころか、スポーツカー初心者だって問題ないぐらい、乗りやすさを重視してセッティングしています。ポルトフィーノともコンセプトが異なり、フェラーリの間口を大きく拡げるモデルなのです」
価格を含めて詳細は現時点ではあきらかになっていない。20万ユーロ(税別)を少し超える、とローマでの発表会場でガレリア氏は語った。発売は夏前という。日本での発表は2020年春頃になりそうだ。