7人乗りでしかもスポーティという BMW X7は魅力的なSUVだ
大型ラグジュアリーSUVは総数では売れる数が限られているかもしれないけれど、ファンは多い。BMWの大型SUV「X7」は、注目してもいいニューモデルだ。
Xシリーズと呼ばれる同社のSUVのラインナップの頂点に立つX7。特徴は、最大7人乗れる3列シートの配列。全長5150ミリと余裕あるサイズのボディを、3130ミリのホイールベースを持つシャシーに載せている。
このサイズのSUVだと日本車では、「トヨタ・ランドクルーザー」が思いつくが、ランクルは全長4950ミリ、ホイールベース2850ミリだから、一回りか二回りコンパクトな印象だ。
BMWのX7の場合、オフロードもその気になれば走れるものの、やはりパッケージングがセリングポイントだ。米国では子どもたちを大勢載せてサッカーに通わせるサッカーマムの市場が大きく、そこを意識したモデルとも言われている。
もうひとつ、X7で感心するのは動力性能だ。ディーゼルエンジンの「X7 xDrive 35d」に乗って、びっくりした。2992cc6気筒ディーゼルエンジンは、運転していてもガソリンだと思い込んでしまうほど、スムーズ。
抵抗なく回転が上がっていき、かつ、振動も、騒音もかなり低い。620Nmの最大トルクが2000rpmから発生するので、加速性にもすぐれている。
加速はすさまじいぐらいだ。アクセルペダルを踏みこんでいくと、速度はぐんぐんと上がっていく。足まわりはしゃきっとしていて、ステアリングホイールを切ったときに車体が反応する操舵性はスポーティセダンのようだ。
かつ、乗り心地も快適で、姿勢の安定性もよい。ハンドリングがよくて、7つある席のうちドライバーズシートがもっともいい席、ということができる。
内装は豪華で、2列めには、アームレストを設けたキャプテンシートが備わっている。足元も広くて、居心地がいい。後席に乗るひとがリムジンのかわりに買っても不思議ではない。3列めシートは子どもたちのためにとっておこう。
運転支援システムもBMWのセリングポイントだ。注目の技術は、2018年の8シリーズから採用が始まった、自動後退システム「リバースアシスト」。
速度が時速35キロ以下での走行なら、直近50メートルの走行ラインを車両が記憶している。リバースギア(R)に入れて作動ボタンを押すと、ステアリングホイールの操作と速度をクルマが自動で調節しながら、後退していくのだ。
狭い道に入ってしまったときなど、暗くても作動するというので、便利そうだ。全長5165ミリのX7だととりわけ嬉しい装備といえる。
外観の新しさは、大きくなったキドニーグリルだ。上下幅がうんと拡大した。最新の7シリーズにも共通した意匠である。かつてBMWがまだ有名でなかった頃は、印象づけるデザインが必要だったかもしれないが、いまは逆というか、どうだBMWだ、と威張るのに必要ということだろうか。
もっとも全体のエレガントなシルエットで、BMWに親しんでいるひとならすぐに、SUVのニューモデルとわかるはず。X7 xDrive 35dの価格は1229万円だ。
小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。