de GRISOGONO 独自のアニメーションで視線を惹きつける 個性豊かなレトロ&ヴィンテージスタイル
こと時計に関しては知識もセンスも備えた専門家たちが集まるバーゼルワールドで、来場者が夢中になって写真を撮ったり試着したりしていたのがこのモデル。ドゥ グリソゴノの新作「ニュー レトロ ダブル ジュウ」だ。
ケースはスケルトンになっていて、ギョーシェエナメルで飾った文字盤の背後にローターが見えている。だが、この時計はクォーツなのだという。ではこのローターは、一体……?
時計をじっとながめていると、やがて訳がわかってくる。ダイヤモンドがきらめく3と9のアラビア数字。ローターによって蓄積されるパワーは、この2つの数字をゆっくりと回転させるために使われているのだ。クォーツムーブメントはトルクが弱いため、こんな芸当はできない。
というわけで、あえてクォーツと自動巻きの折衷スタイルをとっているのである。ドゥ グリソゴノの創業者にしてクリエイティブ・ディレクターのファワズ・グルオジは、名だたるジュエラーやウォッチメゾンで辣腕をふるった後、自らのブランドを立ち上げた鬼才。
強烈な個性を放つ彼の時計はバーゼルワールドでも異彩を放つ。「ドゥ グリソゴノはウォッチメゾンではありません。根っからのジュエラーなのです。だから既成の枠にはまらない、新しいタイプの時計を作ることができるのです」。
モデル名の「ダブル ジュウ」とは、2つの遊びという意味。3と9のアラビア数字は表にホワイトのダイヤモンド、背面にはブラウンダイヤモンドがセットされていて、遊び心たっぷりでありながらも大真面目に美しさを追求しているのが面白い。
インスピレーションの源は、1950年代のインダストリアルデザイン。古いカメラを思わせるワイドレクタンギュラー形で、サファイアクリスタルもカーブをつけて成形しているというこだわりようだ。
時計はただ単に現在時刻を知らせるためのものではなく、人生をより楽しむためにある──そんなウィットを感じさせるデザインだから、目の肥えた人々がドゥ グリソゴノの新作に喝采を浴びせるのだ。
ニュー レトロ ダブル ジュウ
2015年に登場した「ニュー レトロ」コレクションの最新作。自動アニメーションモジュールを搭載し、背面のゴールドローターの力で3と9の数字を回転させている。レトロなワイドレクタンギュラー形のケースで、リューズは12時位置にさりげなく配置。ストラップには、このブランドのシンボルともいえるガルーシャスキンを使用している。角を丸く成形したサファイアクリスタルの透け感、回転する数字の視覚的な面白さなど、ありきたりの時計にはない個性が何よりの魅力だ。クォーツ。ケースサイズ42.3×39.6mm。18KPGケース×ダイヤモンド×ブラウンダイヤモンド。686万8800円。ムラキ 問03-3273-0321
Photographs:Hisashi Wadano Text:Keiko Homma Artwork:Jo Yunbomu
2018年9月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)