PATEK PHILIPPE カラトラバに登場した スポーティなニュールック
今年のパテック フィリップは、東京・新宿で開催された《ウォッチアート・グランド・エキシビション(東京2023)》なしには語れない。そのエキシビションは、パテック フィリップの豊かな歴史と、イノベーションの紹介を含むコンプリケーションウォッチという技術面をモデルやコレクションを通じてさまざまなアプローチで展示されていた。
とりわけヒストリカルピースや日本文化を題材にした希少なハンドクラフト・ルームに注目が集まったが、ミニット・リピーターを集めたマスター・オブ・サウンド・ルームも、実に圧巻であった。ひとつ出会うだけでも一生に何度もないのに、そのフルラインナップが揃う光景は今後日本で見ることはしばらくないだろう。
一方で、パテック フィリップが発行する「パテック フィリップ インターナショナルマガジン」の中で、名誉会長のフィリップ・スターン氏が、歴史と技術面に加え、これからはスポーツウォッチを第3の道筋に加えなければならいないと語っていたのを思い出す。実際にエキシビションの中央に配置された、展示の顔ともいえるナポレオン・ルームでは、ノーチラスやアクアノートのスポーツウォッチも多く展示されていたのである。今年の新作である「カラトラバ Ref.6007」もそうした第3の道筋のひとつといえるかもしれない。
カラトラバは1932年に登場以来、美術学校バウハウスの「機能がフォルムを決定する」という思想を、ウォッチデザインに取り入れてきた。その控えめながら卓越したデザインはカラトラバの本質としてあり続けている。新作カラトラバはそこにスポーティな要素を追加してかつてないほどカジュアルな印象を獲得した。
まずデザインが斬新だ。ダイヤル中央の《カーボン》エンボスパターンを象徴的に配し、二重のミニッツトラックでレーシーかつスポーティに仕上げた。インデックスには読み取りやすいアラビア数字を採用し、秒針やミニッツトラックのアワーマーカーや分目盛りに配されるカラーはレッドを配するのも新鮮だ。さらにストラップは《カーボン》エンボスパターンのカーフスキンでピンバックル仕様。こうしてドレスウォッチとは一線を画し、カジュアルに楽しめる“デイリー・カラトラバ”に仕上げた。
これはパテック フィリップがジュネーブのプラン・レ・ワットに建設した本社工場の落成記念に発売された限定モデルを踏襲したもの。今やゴールド製よりも希少なステンレススティール製だった。本作ではケースをホワイトゴールドにして、エボニーブラックダイヤルでレギュラーモデルとしてリリースされた。
こうしてクラシカルの真髄として君臨してきたカラトラバに、“デイリー・カラトラバ”という新しい選択肢を加えたパテック フィリップ。これからは年齢が偏らない幅広い層から支持されるコレクションとなっていくに違いない。
カラトラバ 6007
1932年に誕生し、ケースと一体化した流麗なラグやフラットなベゼルは、ラウンドウォッチデザインの規範となっているカラトラバ。文字盤中央にカーボンのエンボスパターンを施し、ミニッツトラックのアワーマーカーや目盛りにはアクセントカラーとなるレッドを配し、今までにないスポーティなスタイルに仕上げた。ストラップは《カーボン》エンボスパターンのカーフスキンでピンバックル仕様だ。18KWGケース。自動巻き。ケース径40mm。570万9000円。㉄パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター ☎︎03-3255-8109
Photograph:Takeshi Hoshi
2023年11月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)