「Horlogerie vol.20」表紙の撮影風景
時計メーカーから支給される時計の画像が充実するようになってから、時計をわざわざ撮影する機会も減ってきました。しかし、オルロジュリーではなるべく時計の実機を借りてきて撮影をするようにしています。それは腕時計が実用品である以上、(撮影という理由を付けて)実際に触って使ってみないと、文章でいくらうまく語っても説得力がないからです。もちろん手間やお金がかかりますが、多くの時計を触れることでモノの良し悪しも自然とわかるようになりますし、第一に作り手の想いというものが感じられるようになるのが利点であります。
というわけで、オルロジュリーは時計を撮影することが多いわけですが、時計を借りて本の顔となる表紙撮影を撮影したこぼれ話をお話します。最新号では岩や石をメインテーマにしました。石というのは地球の時間が凝縮された存在です。輝く石(宝石)や巨大な岩(エアーズロック)などは神格化され、特別な意味を持ってきました。イギリスのストーンヘンジも特別な意味を持つ石のひとつ。月と太陽に基づく天文的な配置がなされ、夏至や月食が観測できるという説もある神秘的な石のモニュメントです。
まさにオルロジュリーにはぴったりなテーマです。そこで表紙はストーンヘンジをモチーフに決定しました。モチーフは決まったものの、そこからが大変でした。腕時計サイズのミニチュアなどは売っているはずでもなく、最初から手作りです。スタイリストの窪川勝哉さんが大量の石の塊を購入してきて、ひとつひとつハンマーで砕いて石柱を作っていきました。
※本物の芝生の上に削ってうまく形を作った石をストーンヘンジの写真を元に再現していく模様。
※スタイリストが石の配置を再現して、撮影セットは出来上がっていく。
写真は窪川さんのアシスタントの渡辺さんが石をセッティングしている風景。鳥居に似た門のような組み合わせが特徴的なモニュメントなので、石柱をそれぞれ組み合わせるのが苦労したところです。サークル状に見事に再現しましたが、写真の構図を優先し、一部しか映っていませんが、見事にストーンヘンジの世界観を再現してくれました。一緒に撮影した10日間のパワーリザーブを持つウブロの迫力を引き立ててくれました。次号の表紙も楽しみにしていてください。