RALPH LAUREN モードに寄り添うウォッチメイキング
腕時計が属するものはファッションなのか、それとも何か別の、永遠なる存在なのだろうか。多くのウォッチブランドは、後者だと答えるだろう。だが実際、その結論を出すのは難しい。
時計は確かに、早い勢いで変遷するファッションシーンのトレンドとはやや縁遠い。それは時代を超え、世代を超えて受け継がれるもので、ときには記念日の思い出の品となって、身につける人や家族の思いが強くこもる。
移ろいゆくファッションにくらべ、時計はずっとエモーショナルで、かつパーソナルなものなのだ。腕に目をやるたび、ふとした仕草のたびに、在りし日の温かな感情を思い出して優しい気持ちになる──時計がそうした役割をこなすとき、それは流行を超越する。
だが時計はファッショナブルでなくてよい、と言っているわけではない。ほんのわずかのトレンド感がそこに備わっていれば、時計を毎日身につけるのがもっと楽しくなるはずだ。その絶妙なバランスを保っているのが、ラルフ ローレン。
モード界きっての時計愛好家といわれるラルフ ローレン氏がリシュモン グループとの協働で立ち上げた事業で、洗練されたデザインと優れた技術で仕立てられたコレクションは、世界各国の時計通たちをも魅了している。
ラルフ ローレンの真摯な時計づくりは、もはやファッションブランドの余技ではないのだ。今年登場したのは、ウィメンズとしては初のラウンドケース「RL888」。几帳面に仕上げられた文字盤とシンプルな外装はとりわけ質が高く、流行り廃りに流されない永遠性を持つ。
加えて、アリゲーター、カーフ、パテントレザー、サテン、グログランなど数十色の多彩なストラップが用意されているのが大きな特徴で、ストラップの交換も自分で簡単に行える。
その日の装いに合わせてストラップの素材や色を変えることで、トレンドの動きにもフレキシブルに対応できるのだ。現代女性たちの多面的なライフスタイルを投影したこのコレクションは、ラルフ ローレンというブランドのしなやかさを体現しているように思える。
RL888
アラビア数字とローマ数字を組み合わせたグラフィカルな文字盤。優美なベゼルはアール・デコ時代への憧憬を表す。クォーツ。ケース径32mm。3気圧防水。18KRG。ダイヤモンド(計60石)、アリゲーターストラップ。154万4400円ラルフ ローレン 問03-6438-5800
ラルフ ローレンがウィメンズの旗艦店を構えるニューヨークのマディソンアベニュー888番地にちなんだネーミングだ。
Text _KEIKO HOMMA.
Photographs_HISASHI WADANO.
2016年9月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)