ラグビーワールドカップをより楽しむ為に!

出典:@hisada_yusuke

前回ラグビーに関するコラムを書かせていただいてから早くも1年が過ぎ、その当時1年先に日本で開催予定のラグビーワールドカップについて触れましたが、そのラグビーワールドカップがもう目前に迫っております。

そこで、よりラグビーワールドカップを読者の方々に楽しんでいただき、少しでも大会を盛り上げていただけるよう、再度筆者よりちょっとしたラグビーに関わるお話をさせていただきたいと思います。

今、巷では“ノーサイドゲーム”というラグビーを題材にした企業ドラマが好評を博しています。視聴者満足度が非常に高く、ラグビーワールドカップ前にして新たなファン獲得に非常に貢献しているようです。

しかし、実はこのドラマを制作放映しているのは、ラグビーワールドカップの放映権を持たないTBS。 何故、敵に塩を送るのかという声も多々あるようです。このドラマに毎回登場するキーワードが、“家族”。この“家族”とは血のつながりの“家族”という意味ではなく、“家族と同じような大切な仲間”という意味で使われています。

数多くあるチームスポーツの中でも、取り分けラグビーというスポーツはfor the team の意識が強く、ラグビーを触媒として人と人が何故か強い絆で結ばれているスポーツなのです。8月29日に発表されたラグビー日本代表のメンバー31名のうち、15名は海外にルーツを持っています。

サッカー日本代表の試合やオリンピックを見慣れている一般の方々からは違和感しかないと思いますが、ラグビー日本代表は日本人という血統を代表する存在ではなく、日本でラグビーをやっている仲間の代表なのです。

正に、ラグビー日本代表は“ノーサイドゲーム”に何度も登場する“家族”という言葉を具現化した存在なのです。代表メンバーの出身国は7カ国を数え、世界的に見ても最もバラエティに富んだチームが、“ONE TEAM” をテーマに結束し、日本の為に命を懸けて戦おうとしているので、是非色眼鏡なく応援してもらいたいものです。

出典:@takegram83

海外にルーツを持つ選手とはいえ、大半のメンバーは学生時代に日本に留学に来て、長年日本に住み、日本のラグビーシステムの中で育ち、本来の日本人以上に日本を愛している面々なのです。

因みに、放映権がないTBSが何故この時期にラグビーをテーマにしたドラマを制作放映したのか、それは社長が早稲田ラグビー部OBであり、担当プロデューサーが慶応ラグビー部OBということが起因しているようです。

ラグビーファミリーの方々が、世界的スポーツイベントであるラグビーワールドカップを少しでも盛り上げたいという意図で、会社の利権を越えて実現させたドラマなのです。このドラマは、所謂昔のスポコンものの要素が満載で、30年以上前に一世風靡したスクールウォーズというラグビーを題材とした学園ドラマの正に社会人版のようだと言われています。

最近のドラマでは殆ど見掛けることのない、暑苦しい程の熱量を発した話が展開され、米津玄師がこのドラマの為に書き下ろした曲と共に、毎回視聴者の心を揺さぶり、感動させているのです。リアリティを追求する為に、本当のラグビー選手を俳優に起用し、試合のシーン撮影は実際のラグビーの練習並みに過酷を極めているようです。

その結果、放映された試合シーンを視聴した視聴者からは、本当のスポーツ観戦をしているような錯覚に陥り、思わず声を張り上げて応援してしまったという声が多々上がり、本当のラグビーの試合を見てみたいという人が急増しているようです。また、このドラマには、元ラグビー日本代表で、チームの現エースという設定の”浜畑譲“という人物が登場します。

漢として最高に格好良い人物として描かれており、その行動と言動が、毎回視聴者の涙腺を刺激しているのです。実際に演じている演者の好演もあり、こんな俳優が何処にいたのかと話題なのですが、この人物こそ、エディージョーンズが率いたラグビー日本代表における実際の初代キャプテンであり、エディーにキャプテンとして最高の資質を持っている人格者と言わしめた廣瀬俊朗なのです。

廣瀬は、北野高校・慶応義塾大学・東芝・日本代表と所属する全てのチームでキャプテンを担った程の人物ですが、2015年ラグビーワールドカップの2年前にキャプテンを外され、2015年ラグビーワールドカップでは、登録メンバー31人に選ばれたものの、1試合にも出ることなく帰国したのです。

元々、エディージョーンズは廣瀬をワールドカップ日本代表メンバーに選出したものの、試合に使うつもりは無かったようです。ある意味残酷な判断ですが、廣瀬という人物が31人の中にいることがチームの為になるとの判断だったようです。

実際、廣瀬は裏方としてチームに最大限の貢献をします。対戦チームの選手を徹底的に研究し、自分自身がそのプレーをコピーすることによる実戦練習の敵役にもなりました。キャプテンのリーチマイケルを始めとした代表メンバーの相談役にも。

試合前の気持ちを盛り上げると共にリラックスを促す為、トップリーグ全てのチーム毎に日本代表向けの応援ビデオを作成してもらい、南アフリカ戦の前日にサプライズ上映したのです。ラグビーファミリー全員が日本代表を応援していることを面白可笑しく映像で伝えたのです。

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ところで、ラグビーの背番号は試合に出るポジションにより決まっているので、サッカーや野球のように個人に紐ついた背番号がなく、個人所有のユニホームが存在しないのです。よって、試合の前日に1番から順番に試合に出るメンバーを読み上げ、ジャージを手渡しするのが多くのチームが行うラグビー特有の儀式なのです。

ラグビージャージは試合に出る権利の証であり、ラグビー選手にとっては神聖で特別なものなのです。なので、あるレベル以上でラグビーをやっていた人間にとって、日本代表のラグビージャージを着るというのは恐れ多い気持ちがあり、日本代表のジャージを着て応援という人を見ることはほぼないのです。

このような背景を踏まえた上で、話を少し戻します。2015年ラグビーワールドカップは優勝候補の南アフリカに勝ち、勝敗では南アフリカ・スコットランド・日本が横並びになったものの、得失点差の関係で、最終のアメリカ戦を前にして日本の予選リーグ敗退が決まってしまいます。よって、結果に関わらず、アメリカ戦がこの日本代表が行う最終試合となったのです。

しかし、予選リーグ敗退が決定しているものの、日本のラグビー発展の為にアメリカには絶対勝って終わろうと全員の気持ちが昂ぶります。当然、試合前日に最後の試合に出場するメンバーへのジャージ渡しの儀式があります。

キャプテンのリーチマイケルが、1番から順番に名前を呼び、ジャージを手渡しするといういつもの光景。先発メンバーが1番から15番。16番から23番迄が交代メンバー。しかし、この日だけは少し違う光景がありました。リーチマイケルが、23番のジャージを出場メンバーに手渡した後に言います。

「実は、本日はまだジャージがあります。これは、このメンバー全員から感謝を込めて廣瀬さんと湯原さんに24番と25番のジャージをお渡ししたい。これは、裏方で皆を支えてくれた廣瀬さんと湯原さんへの皆の気持ちです」廣瀬が思わず男泣きをしてジャージを受け取ります。本当に嬉しいと!

家族のような絆を感じさせるラグビーのエピソードです。ドラマの中の“浜畑譲”は、“廣瀬俊朗”そのものであり、演技経験のない廣瀬が視聴者を感動させることが出来るのは、彼の真の姿がスクリーンを通して視聴者に伝わっているのでしょう。

出典:@ku.ma2088

9月20日から日本で開催されるラグビーワールドカップには、ドラマ以上にドラマチックなことが多々起こると思います。日本代表のみならず、色んな国の代表がそれぞれの熱いドラマを演じるのは間違いありませんので、是非一緒にラグビーワールドカップを楽しみ、盛り上げていただきたいものです。

ラグビーワールドカップには、第2回大会から毎回開催国の歌手によって歌い継がれているテーマ曲があります。曲名は“World in Union” 今回歌うのは”いきものがかり“の吉岡聖恵です。非常に良い歌詞で、ラグビーというスポーツの思いが詰まっています。是非機会があればお聴きください!


There’s a dream,I feel so rare, so real
私にはとっても素晴らしく素敵な夢がある

All the world in union The world as one
それば世界が団結して一つになること

Gathering together One mind, one heart
集い合い、心と思いを一つにする

Every creed, every color Once joined, never apart
様々な人種や肌の色の人も一度に集い、もう二度と引き裂かれることはない

Searching for the best in me,I will find what I can be
自己の最高を表現しそれを発揮できれば

If I win, lose or draw there’s a winner in us all
ゲームで勝っても負けても、引き分けでもすべての人が勝利者だ

It’s the world in union the world as one
それば絆だ、世界は一つだ

As we climb to reach our destiny a new age has begun
理想へのぼりつめれば、新しい時代は始まる。

We face high mountains, must cross rough seas
様々な困難はたちはだかるかもしれない。

We must take our place in history and live with dignity
しかし、過去の歴史にも目を背けることなく、尊厳をもって生きる事だ

Just to be the best I can sets the goal for every man
全ての人が目標にむけてベストを尽くせば

If I win lose or draw It’s a victory for all.
ゲームでは勝っても負けても、引き分けでもすべての人が勝利者だ

It’s the world in union the world as one
それは世界の絆、世界は一つ。

As we climb to reach our destiny A new age has begun
高みへたどり着ければ、新しい時代が始まる。

ライター:中路由人(なかじゆうと)

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