HG TOPIC Vol.37 The Ultimate

なかなか手に入らないが、作り手本人の言葉も直接聞く機会がある独立系ウォッチメーカーの作品。その中でも、手にできたら幸運と言われている国内外2つのブランドをご紹介。

Theme:時計愛好家&プロ垂涎の独立系ウォッチメーカー

今年発表された8作目「RRCCⅡ」。「シンプルなデザインで精度と美しさを強調したかった」というレジェピ氏。懐中時計を着想源にグラン・フーエナメル文字盤を採用。1秒ごとに秒針が動く“デッドビートセコンド”という希少な機構を搭載し、彼の“精度”への追求を表明している。

AKRIVIA
夢を叶えた、若き鬼才がこだわる“クラシック”の美学

アワーグラス銀座店で取り扱いを開始した、弱冠25歳にして自身のブランドを設立し、6年目には数々の賞を受賞する時計を生み出した時計師がいる。スイスのジュネーブを拠点に活動する「AKRIVIA(アクリヴィア)」のレジェップ・レジェピ氏だ。彼の出身はコソボ共和国。幼少期、スイスで働く父が愛用していた腕時計に興味がわいたのが時計との出会いである。12歳で、戦禍を避けて家族でスイスへ移住したことが少年の運命を定めた。

最初は書籍で独学を試み、14歳でパテック フィリップの時計学校に合格。15歳から研修生として時計づくりを学び始め、「いつかは自分のデザインした時計を作る」と心を決めた。すぐに頭角を表し、21歳にはBNBコンセプトの責任者のポジションに。夢の実現に向けて、独立時計師であるF.P.ジュルヌ氏のもとでも学んだ。

「“AKRIVIA”の名は、精度という意味です。もっとも正確に時計を刻む時計を作りたいという思いが込められています。伝統的な時計製造を尊重しながら、自分の思い描く時計を完成するのがテーマ。2020年には、やっとムーブメントのパーツまでを完全に自社で製造できるようになりました」とレジェピ氏は語る。

2022年、ブランドは10周年を迎えた。毎年発表される限定の新作は、つねに購入希望者が殺到するほどの域である。「それでも“達成”という言葉は私にはありません。コソボには『努力すればするほど実る』という考え方があります。すべては努力の結果。つねに忍耐を持って精進して、日々よりよいものを作り続け、多くの人を感動させられたらと思います」

レジェピ氏の工房はジュネーブ旧市街にあり、オープンキッチンのように時計づくりの工程を目にすることができる。

時計の動きを楽しめるよう大きめに設計された歯車が特徴のムーブメント。建物のように階層をなす様は幻想的ですらある。

Information Contact
アワーグラス TEL.03-5537-7888

新作時計左から「NH TYPE1D」「NH TYPE1D-1」「NH TYPE2C」「NH TYPE2C-1“Lettercutter”」「NH TYPE3B」。すべて数量限定生産。

NAOYA HIDA & Co.
第三世代のケースを導入し、新たな一歩へと進化

「今、最も入手困難なマイクロブランド」と称される日本のウォッチメーカーがある。時計師ではなく、稀代の時計の目利き・飛田直哉氏が設立した「NH WATCH」だ。2018年に、国内外の著名高級時計ブランドに勤めた経験から自分が理想とする時計を作るために立ち上げた。

目指すのは、「ヴィンテージ腕時計や懐中時計時代の美しさと現代の生産技術、手彫りの文字盤のディテールを融合させた優れた腕時計」。20年には時計師の藤田耕介氏、22年には彫金師の加納圭介氏が加わり、快進撃を続けるばかりだ。

とくに、今年はすべてのモデルのケースが刷新された“節目の年”という。5月には精力的に新作5本を発表した。世界が注目する“小さな巨星”の活躍から目が離せない。

新生ケースは、ねじこみ式ケースバックとよりヴィンテージ調にデザインされたラグが特徴。飛田氏が愛する1950〜60年代に製造されたヴィンテージ時計のフォルムがベース。

新生ケースは、ねじこみ式ケースバックとよりヴィンテージ調にデザインされたラグが特徴。飛田氏が愛する1950〜60年代に製造されたヴィンテージ時計のフォルムがベース。

中央が飛田氏、左が時計師の藤田氏、右が彫金師の加納氏。

Information Contact
NH WATCH :https://www.naoyahidawatch.com

2022年9月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

関連記事一覧