CARTIER オーバル型の滑らかな曲線美


特集撮影のために訪れたザ・ブセナテラスのほど近くに、岬から桟橋で繋がった海中展望塔がある。そこは海底6mほどまで降りることができ、海底の展望フロアからは珊瑚礁の海と亜熱帯の色鮮やかな魚たちを360度のパノラマで美ら海を見渡せることができた。

珊瑚といえば、今年のウォッチズ&ワンダーズでカルティエは「クラッシュ [アン]リミテッド」や「タンク」にレッドコーラルを使用したジュエリーウォッチを発表した。ジュエリーで使われる珊瑚(コーラル)は宝石珊瑚といわれ、特に赤珊瑚は希少だ。高知県沖や五島列島が名産だが、沖縄周辺にも生息していて、水深100~300mの深い海で1mm成長するのに5~10年もかかるという。

近年レッドコーラルは世界的に人気があり、プレシャスな素材として存在感を高めている。カルティエはこの鮮烈な赤をジュエリーにも採用したことがあり、それに続きジュエリーウォッチにも採用した。これからますます見る機会が増えるかもしれない。現在再建中の首里城の外観の色合いも連想させ、沖縄のビーチリゾートにもとてもフィットしそうだ。

一方で、1912年に誕生した「ベニュワール」の新作にも注目だ。フランス語でバスタブを意味するモデル名のように、優美な曲線を描くオーバル型ケースが特徴。カルティエ創業者の孫にあたるルイ・カルティエが伝統的なラウンドフォルムを研究し、その形を上下に引き延ばすというアイデアによって生み出されたデザインだ。並行する2本の直線がつながる曲線であるという考え方は今のデザインにも引き継がれている。

1958年には現在でも採用されるオーバルケースが完成し、ぷっくりとした丸みのあるベゼルとなる。この美しいケースフォルムで、カトリーヌ・ドヌーブ、ロミー・シュナイダー、ジャンヌ・モローなどのセレブリティたちも魅了してきた。そんな「ベニュワール」はやや小ぶりのケースサイズに、ゴールドブレスレットが加わった。ブレスレットはフランス語で「黄金の冠」を意味するカスクドールと呼ばれ、デザインの異なる滑らかなコマを組み合わせ、アクセサリーとしての華やかさを演出する。洗練されたプロポーションをもちながら、ローマ数字インデックスやサファイアカボションといったカルティエのデザインコードで全体をまとめ上げた。

南国の果実のような美しいプロポーションを持つこの時計を着けたら、楽園リゾートでいっそう輝くことができるだろう。「ベニュワール」はそう思わせてくれる強いオーラを持つ時計だ。


ベニュワール
オーバル型の滑らかな曲線が美しい「ベニュワール」。ケースと同じ素材のブレスレットはデザインの違うコマを組み合わせ、アクセサリーとしての表情を高めた。クォーツ。18KYGケース。ケースサイズ31.4×23.1mm。381万4800円。問カルティエ カスタマー サービスセンター☎0120-301-757

Photograph:Takeshi Hoshi

2023年6月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

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