この秋こそ、ぜひ愛でたい! 至高のムーンフェイズウォッチ

美しい姿とドラマチックなその「満ち欠け」から、私たち人類は夜空に浮かぶ「月」の姿に、大昔から魅了されてきました。そして月には美女が住むという「かぐや姫伝説」のような、月にまつわるロマンティックな物語が世界各地で数多く生まれ、語り継がれてきました。

ただ眺めるばかりでなく、その上に足跡を印した現代の私たちにとっても、月は今なお宇宙の神秘とロマンを感じさせてくれる存在です。あの満ち欠けは、月が地球の周りを公転することで太陽の光が当たる部分が変わり、地球から見た月の形が変化することで起こります。

その周期は約29.53日。これを基準にして作られた曆が、今から152年前、1872年の「明治の改暦」まで使われていた太陰暦です。天才アブラアン-ルイ・ブレゲを筆頭に古今東西の時計師たちは、この月の規則正しい“変身”を時計の文字盤上でなんとか再現したいと苦心しました。そして誕生したのがムーンフェイズ(Moonphase、月相)表示機構です。

その機構はさまざまですが、もっとも一般的なのは59日で1回転するディスクの上に“人の顔をした月”がふたつあり、29.5日の周期で「雲の間から顔を出す」というもの。月ではなく太陽が曆の“主役”になったいま、この機構は、空を眺めるように“文字盤でお月見ができる”詩的で優雅なエンタテインメント”として、人の目を楽しませています。

今回ご紹介するブレゲ「クラシック」のムーンフェイズ機構付きモデルは、この機構に情熱を注いだ天才ブレゲが18世紀に製作したムーンフェイズ付きの懐中時計。その機構とスタイルを腕時計で再現した趣き深いモデルです。

次にご紹介する今年の新作、アワーインデックスにバゲットカット・ダイヤモンドを贅沢に使ったパテック フィリップの年次カレンダーモデルはこの機構の精度を徹底的に追求。一般的なムーンフェイズの精度が「3 年間で約1日」なのに対して、その約40倍の「122年間で約1日」という、驚きの高精度を実現しています。

またオートクチュールデザイナーのイーキン・インとのコラボレーションで誕生したヴァシュロン・コンスタンタンの「エジェリー・ムーンフェイズ」の限定モデルは、全部で36個、計約0.1カラットのラウンドカットダイヤモンドをセットしたリングの中にゴールド製の月と、ライラック色のマザーオブパール製の雲が浮かぶ贅沢なムーンフェイズモデル。どれも、デザインや機構で唯一無二の魅力を追求した至高のムーンフェイズモデルです。


BREGUET/ブレゲ クラシック7137
ムーンフェイズ表示機構の先駆者ブレゲが1794年に製作した自動巻き、クォーターリピーター機能付き懐中時計の傑作「No.5」。立体感のあるムーンフェイズ表示をはじめその文字盤デザイン、ギョーシェ文字盤などそのディテールを継承したクラシックな薄型のドレスウォッチ。自動巻き。18KWGケース。ケース径39㎜。アリゲーターストラップ。30m防水。709万5000円。


PATEK PHLIPPE/パテック フィリップ 年次カレンダー、ムーンフェイズ 5396
スイス時計発祥の地・ジュネーブの時計作りの伝統・芸術的な仕上げを守る一方で、常に新機構の開発に挑み、機械式時計の未来を開く名門。その画期的な新機構のひとつ、年に1度・2月末だけの日付修正で使える「年次カレンダー」機構モデルの最新作。ブラック・グラデーションのブルーソレイユ文字盤にダイヤモンドのインデックスが燦めく。ムーンフェイズの外周部は24時間になっている。自動巻き。WGケース。ケース径38.5㎜。アリゲーターレザーストラップ。3気圧防水。1006万円。


VACHERON CONSTANTIN/ヴァシュロン・コンスタンタン エジェリー・ムーンフェイズ 8005F/000R-H030 37MM ピンクゴールド
ドレスのプリーツをイメージした模様を、タペストリー技法で表現したマザーオブパール製の文字盤の中で、刺しゅう針を思わせるゴールドの針とアラビア数字、オフセンター配置されたムーンフェイズ表示が優雅に存在感を主張する。星々が輝くディスクの繊細な造り込みも見事。その外周には36個のブリリアントカットダイヤモンドがセットされている。テイストの違う3本のストラップが付属する。機械式自動巻き。18KPGケース。ケース径37㎜。写真のアリゲーターレザーのほか、仕上げの異なる2種のカーフスキンレザーストラップが付属。3気圧防水。世界100本限定。642万4000円。

Text & Select : Yasuhito Shibuya

2024年9月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

関連記事一覧