1600年間を超える叡智の結晶 「パーペチュアルカレンダーウォッチ」 最新モデルの魅力

Patek Phillippe
左)世界初のパーペチュアルカレンダー腕時計「Ref.97 975」。右)「5236P – インライン永久カレンダー」自動巻き。Ptケース。 ケース径41.3 mm。ケース厚11.07 mm。 アリゲーターストラップ。3気圧防水。2239万円(税込)
もうすぐ年末年始。そろそろ2025年のカレンダー(暦)を用意して掛け替える季節です。暦が最初に作られたのは紀元前16世紀、古代メソポタミアで、と言われています。ところで、人はなぜ暦を作ったのでしょうか。それは農作物の種まきや収穫を、また衣食住の準備や祭事の時期を正確に知り行うために必要だったのです。この暦を作るために人類は大昔から月や太陽、星座の動きを観測してその規則を研究してきました。これが天文学の始まりです。
ただ、暦の元になる地球や月や太陽の動きは複雑な自然現象なので単純な暦では役に立ちません。そこで天文学者たちは誤差ができるだけ少ない暦を開発しようと努力してきました。そして生まれたのが、ローマ教皇グレゴリウス13世が1582年に導入した「グレゴリオ暦」です。いま世界のほとんどの人がこの暦に基づいて生活しています。
また時計師たちは、この暦を完璧に反映した時計作りに挑戦してきました。その成果が、史上最高の天才時計師”アブラアン‐ルイ・ブレゲが18世紀に発明した「パーペチュアル(永久)カレンダー」。具体的には「大の月、小の月」の修正に加えて、4年に1度、2月末にやってくる「うるう年」のカレンダー修正を不要にした機構です。スイス・ジュネーブの名門パテック フィリップは1925年、この「パーペチュアルカレンダー」を搭載した腕時計を初めて開発・製作したこの分野のパイオニア。そして同社が2021年に発表した最新のパーペチュアルカレンダーモデルが「5236P – グランド・コンプリケーション」。曜日、日付、月を12時位置の大型表示窓に並べて表示する革新的なインライン表示が特長です。
ただ「パーペチュアル(永久)」という名称ですが永久に修正不要ではありません。修正不要なのは最長で100年間。なぜ100年間かというと、グレゴリオ暦には「うるう年」に関して「4年に1回、2月の末に1日を付け加える」というルールに加えて「100年ごとにうるう年をキャンセルする。でも400年間では1回はうるう年にする」という、ふたつの特別ルールがあるからです。今年2024年、スイス・シャフハウゼンの名門IWCはこの特別ルールを組み込んだ画期的な腕時計「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」を開発・発表しました。この時計、動き続けている限り、少なくとも西暦3999年まではカレンダーの修正が不要です。さらに12時位置のダブル・ムーンフェイズ表示も「4500万年に1日」という天文学的な精度を実現。ここに“究極のパーペチュアルカレンダーウォッチ”が誕生しました。
クロノグラフの名門「ブライトリング」も去る8月末、創業140周年を記念して「キャリバー01」をベースにした、初の自社製パーペチュアルカレンダー・クロノグラフムーブメント「キャリバーB19」を搭載した3つの限定モデルを発表・発売しました。クロノグラフとパーペチュアルカレンダー、ふたつの複雑機能を搭載しています。こちらも今年、見逃せないパーペチュアルカレンダーモデルのひとつです。

IWC
「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」自動巻き。Ptケース。ケース径 44.4㎜。ケース厚14.9㎜。アリゲーターストラップ。5気圧防水。価格要問い合わせ。

Breitling
左から)「プレミエ B19 ダトラ 42 140周年アニバーサリー」「ナビタイマー B19 クロノグラフ 43 パーペチュアルカレンダー 140周年アニバーサリー」「スーパー クロノマット B19 44 パーペチュアルカレンダー 140周年アニバーサリー」ケース径はそれぞれ42㎜、43㎜、44㎜。ストラップは左の2本がアリゲーターストラップ。右がラバーストラップ。防水性はそれぞれ、10気圧防水、3気圧防水、10気圧防水。すべて自動巻き。レッドゴールドケース。各140本限定で140周年記念アニバーサリーブックと特別なウォッチボックスが付属。価格はそれぞれ777万円。
Text : Yasuhito Shibuya
2024年11月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)