CARTIER 幻想の世界へ誘う輝きのらせん

発想の転換—−しばしば、創作の世界では、このアイディアが新しい扉を開く。まさに、この春「ウォッチズ&ワンダーズ2022」で発表された、全く新しいコレクション「クッサン ドゥ カルティエ」は、その最たるものだろう。

名前の通り、優しいクッション型のスクエアケースが特徴になっている。そのケースをダイヤモンドとスピネルの大きさの異なる宝石がグラデーションを描いて、らせん状にセッティングされている様が実に優雅だ。ところが、よく見るとスピネルは、通常は平らな面(テーブル)を上にセッティングされるラウンドブリリアントカットをあえて逆さまにして、尖った部分(パビリオンと呼ぶ)を上にしてセッティングされていることに驚かされる。

逆さまにしても、輝きは美しく、触っても滑らかなところはハイジュエラーの卓越した技が息づいているからにほかならない。この“逆転のセッティング”により、わずかにエッジィな魅力が加わった。

そして、「クッサン ドゥ カルティエ」には、もう一つの発想の転換の物語がある。押すとふかふかと伸縮するフレキシブルクッションケースのモデルだ。ケースは硬いものという発想を離れ、インナーケースは硬いのだが、アウターケースにメッシュ状の18KWGをかぶせて、今までにない感触を楽しめるようにした。メッシュには、細やかに宝石がセッティングされていて、センシュアルな輝きを放つところも特筆すべき点だ。

どんな時代も、類を見ない美学で世の中を席巻してきた「カルティエ」の新基軸。ぜひ実際に近くで目にしてほしい。

クッサン ドゥ カルティエ

クォーツ。18KWGケース。カーフレザーストラップ。ケースサイズ縦30.4×横31.1mm。660万円[参考価格]。問カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757

Photographs:Hisashi Wadano

2022年6月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

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