【CARTIER】捻りを備えたブランカードスタイルを持つ新作「トレサージュ」

腕に着けて時刻を確認できる実用的な時計が誕生してから約1世紀あまり。名作「サントス」ウォッチで“世界初の腕時計”という称号を手にしたカルティエだが、それ以上にウォッチメーカーとして確固たる地位を築けたのは、数々の斬新なウォッチデザインを生み出してきたからにほかならない。
実際、腕時計が登場する以前、さすがのカルティエも当時製作していた懐中時計は、オーソドックスな丸形を主体としていて、デザイン的な遊びが少なかった。しかし腕時計の時代になると、もともと宝飾品やアクセサリーの製作で取り入れていた明確なラインと対称的な構成を持つ「ガーランドスタイル」に、それを発展させた「アールデコ」を腕時計のデザインにいち早く導入して、時計業界での先駆けとなった。1904年に飛行士アルベルト・サントス=デュモンのために作られた「サントス」のスクエアケース、06年には樽型の「トノー」、13年には亀の甲羅から着想した「トーチュ」といったアールデコの萌芽を感じさせるウォッチを生みだし、そして17年にはアールデコ スタイルの傑作となった戦車を上からみた形をヒントにデザインされた「タンク」へと続く。こうしてアールデコ スタイルのウォッチへと繋げたコレクションによって、カルティエは名声を確立させたのである。
2025年に登場した「トレサージュ ドゥ カルティエ」は、一見するとこれまでのようなアールデコウォッチには見えない。フランス語で“編み込み”を意味するトレサージュをモデル名に冠し、ボリュームのある両サイドのツイストが絡みつくデザインが印象的なジュエリーウォッチだ。しかし、注意深く見ていくと、レクタンギュラーケースと一体化したレザーストラップに、それを挟んだゴールド製のツイストの造形はカルティエのアールデコ スタイルの特徴である「ブランカード」であることがわかるだろう。
ブランカードとは、「担架」を意味するフランス語。「タンク」ウォッチなどで見られる長方形の文字盤にサイドを上下に伸ばしたケースはブランカードと呼ばれ、その突き出た先端をラグとしてストラップと繋いだ。「タンク」ウォッチは第一次大戦中の兵器である戦車からインスピレーションを得ているが、製品化する際には医療器具に似たデザインとなっていたという事実がとても興味深い。それは「タンク」という名称は強くて男らしい戦争をイメージより、人を助けるというより穏やかなイメージをユーザーに与えたかったのかもしれない。
「トレサージュ ドゥ カルティエ」は、このブランカードのデザイン性と機能性に、カルティエらしいジュエリー製造の官能的でダイナミックなデザインを融合させた。両サイドの躍動感のあるフォルムと直線的なスクエアダイヤルとの対比によって、いっそうウォッチの存在感を際立たせている。カルティエの伝統的なデザインを取り入れながら、ジュエラーとしてのクリエイティビティを発揮した「トレサージュ ドゥ カルティエ」は、カルティエのウォッチメイキングにおける懐の深さを物語っている。

トレサージュ ドゥ カルティエ
ケースの両サイドにボリューミーな螺旋状のモチーフを配したカルティエの独創性が光る新作ウォッチ。レクタンギュラーケースの文字盤は光沢のあるブラックラッカーにゴールドの時分針がエレガントに映える。ストラップは独特なシボ感のあるシャイニーブラックレザーと、ブラックスムースレザーの2本を付属。このモデルのほかにゴールドの螺旋部分にダイヤモンドをパヴェセッティングしたモデルなど、全4バリエーションをラインナップする。クォーツ。18KYGケース。日常生活防水。ケースサイズ56.2×25.7mm。666万6000円。㉄カルティエ カスタマー サービスセンターTel.0120-1847-00
Photographs:Noboru Kurimura
2025年9月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

