PATEK PHILIPPE パテック フィリップが誇る2つのメカニズムを内蔵
世最高のマニュファクチュール(ムーブメントからケースまで、自社内で一貫生産する時計メーカーのこと)として時計界に君臨するパテック フィリップ。同社は1839年の創業以来、常に機械式時計のメカニズムの開発をリードし、先進的な機構と機能を持つムーブメントとデザイン性で時計史に偉大な足跡を刻んできた。
中でも機械式時計が「過去の遺物」のように思われていた1980年代に「時刻を音で知らせる」ミニットリピーター腕時計の革新に取り組んだ偉業は、時計愛好家の間では伝説となっている。
だがクロノグラフについては、2000年代初めまでの長きにわたり、実績のある他社製のエボーシュをベースにするという、非常に手堅い製品作りを続けてきた。そして今から14年前の2006年、パテック フィリップが満を持して登場させたのが、初の完全自社製の自動巻きクロノグラフムーブメント「CH 28-520」系とその搭載モデル「Ref.5960P」だった。
クロノグラフ機構には、確実で快適な操作を可能にするコラムホイール機構に加えて、クロノグラフのスタート/ストップ機構には、従来の水平クラッチとは異なり、オン/オフの際に針飛びが起こらない垂直クラッチ機構を同社で初めて採用した。
さらに窓式のカレンダーには、1996年にパテック フィリップが初めて開発した「年次カレンダー」機構を採用。1年に1度、3月1日にだけ調整を行えばいいこのカレンダー機構は使いやすく、同社が時計史上に打ち立てた技術的金字塔のひとつだ。
「Ref.5905」は、2019年に登場したこの伝説の「Ref.5960」の基本機能とメカニズムを継承する最新モデル。秒を表示するスモールセコンド表示はないが、水平クラッチ機構のような大きな摩擦損失がないので、クロノグラフ機構を常時作動させることで、クロノグラフ秒針を通常の秒針としても使える。芸術性と実用性が見事に両立された、パテック フィリップならではのコンプリケーションモデルの名作といえよう。
年次カレンダークロノグラフ Ref.5905
垂直クラッチを備えたフライバッククロノグラフ機構と、年に1度だけの調整だけで月・日・曜日を正確に表示してくれる「年次カレンダー」を搭載。長くパテック フィリップの完全自社製クロノグラフムーブメントを待ち望んでいた時計愛好家を喜ばせた「Ref.5960P」(2014年製造中止)の後継モデル。丸型ウォッチの名作「カラトラバ」のDNAを継承する現代的なケースのデザインも魅力。キャリバーCH 28-520 QA 24H搭載。自動巻き。18KRGケース。ケース径42mm。アワーグラス銀座店 問03-5537-7888
Photographs:Hisashi Wadano
Text:Yasuhito Shibuya
Styling:Katsuya Kubokawa
2020年3月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)