このサイズを使い倒したい、メルセデス・ベンツGLSクラス

ルーフが長く堂々としたスタイル

メルセデス・ベンツGLSは、現在、メルセデス・ベンツのSUVの頂点に位置する(本格的なクロスカントリー型4WDであるGクラスをべつとして)。

ベースに位置するのはGLA。サイズを比較してみると、GLAが全長4430ミリ、全幅1805ミリなのに対して、GLSでは5210ミリ、1955ミリ。堂々たるものである。

最新のGLSを先代のGLSと比較しても、全長で77ミリ、全幅で22ミリ拡大している。ホイールベースは3135ミリと長く、3列シートを備えた7人乗りなのだ。

ボディサイズは大きい。それでいて、運転しやすい。これがGLSの美点といえる。車体の大きさを感じさせない。

新型が日本発売されたのは2020年3月23日だ。試乗したのは「メルセデス・ベンツGLS400d 4MATIC」。2基のターボチャージャーを組み合わせた直列6気筒ディーゼルエンジン搭載モデルである。

大径ターボと小径ターボとの組み合わせと、メカニズムは凝っている。低回転域は回り出しの反応が早い小径ターボ。エンジン回転が上がっていくと、大径ターボにバトンタッチし、大きなトルクを生み出すのだ。

エンジンのパワフルさには、あらためて驚かされた。、約2..4トンの車重の車体でもまったく力不足を感じさせなかった。最大トルクが700Nmというだけある。

ステアリングは路面とのコンタクトを失わず、乗用車のように操縦の楽しさを与えてくれるものだ。「ADS PLUS(アダプティブダンピングシステムプラス)」と名づけられた「 AIRMATIC」 サスペンションシステムの恩恵だ。

車体はフラットで、ステアリングホイールを切り込んだときの車体の反応のよさは期待以上。高速でのレーンチェンジも不安がない。乗用車に乗ってきて、はじめてこの手のSUVを試す、なんてひとでも違和感をおぼえないはずだ。

インテリアは新しい世代のデザインだ。ダッシュボードは水平基調で、エアコンの四角い吹き出し口が並ぶ。そこに据えつけられたのは、大きな液晶画面。

「ヘイ、メルセデス」で起動する音声会話式コマンドの「MBUX(メルセデスベンツユーザーエクスペリエンス)」が組み込まれていて、たたとえば、「ちょっと暑いんだけど」と言うと、「室温を1度下げます」などと応じてくれる。

セリングポイントは、3列目シートである。アクセスは、2列目シートのショルダーに設けられているボタンを操作して行う。シートには、おとなが2人、座っていられる。

ただし。3列目を設けたためか、今回のモデルでは、2列目シートが小ぶりになった印象だ。3列目シートが必要なく、かつ、後席も使うことが多いというならば、GLEを考えてもいいかもしれない。

かつてGLの頃には、やたら四角ばってて、デカさばかり強調されてた気がした今回のGLSは、機能主義をうまく、デザインのなかに取り込んでいる。見た目は軽快。いっぽう、実際には、荷室も広いのだ。

価格は1263万円。メルセデス・ベンツでは、同じ6気筒ディーゼルエンジン搭載の「GLE 400d 4MATIC Sports」(1126万円)と近接している。2列シートでいいならGLE、3列欲しいならGLSというのが、選択の基準になるだろう。

ガソリンモデル「GLS580 4MATIC SPORT」も設定されている

適度にタイトで乗用車的に居心地のいいコクピット

3列目へのアクセスのために2列目シートが電動で倒れる

小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。

関連記事一覧