ウィンドシールドを持たない「マクラーレン・エルバ」は究極のロードスター
マクラーレン・オートモーティブが2020年3月に発表した新モデル「エルバ」が日本でも発表された。4月6日にジャーナリストにお披露目されたこの新型車は、同社のカテゴリーでいうとアルティメットシリーズに属するもので、「究極のドライビングプレジャーを実現する」と謳われている。
815馬力の最高出力と800Nmの最大トルクを持つ4リッターV型8気筒ツインターボエンジンをミドシップしたモデルで、静止から時速100キロまでの加速は3秒以下、静止から時速200キロまでは6.7秒。「マクラーレン・セナ」より速いという。
もうひとつ注目すべきがボディだ。前ヒンジで上に跳ね上がるディヒドラルドアやエンジンルームや荷室のリッドなどは別パーツだが、ボディはほぼ一体成型。炭素樹脂で作られた車体は、それによって軽量化を実現しているという。
ユニークなのは、英国をはじめ、欧州や日本などの市場向けは、ウィンドシールドもサイドウィンドウも持たない点だ。マクラーレンの「アクティブエアマネージメントシステムAAMS」という新技術がそれを可能にしている。
車速が約50キロを超えるとフロントボンネットのエアスプリッター(取り込んだ空気を利用して前輪を地面に押しつける空力デバイス)に組み込まれた整流板が自動で持ち上がり、コクピットへの空気の流れを調節する。
空気の流れを利用して「エアカプスル」を作ることで、ウィンドシールドがなくても、存在するのと同じ状態を作ることが可能で、小雨なども後ろに流してしまうそうだ。
ただし、周囲のクルマからの跳ね石の問題などがあるため、マクラーレンではパートナー企業であるベルヘルメッツ社との提携で、オーナー専用のヘルメットを用意。運転者用は運転席背後の収納スペースに、パセンジャー用は足元に収納できるようにするという。
エルバの名前は、1964年から67年にかけて英エルバエンジニアリング(60年代にはエルバカーズに)がマクラーレンの創始者であるブルース・マクラーレンと共同で開発したM1Aにはじまるレーシングカーに由来している。
マクラーレン社では、いまCOVID-19対策のため、人工呼吸器の設計への協力と、自動車の製造ラインを使っての人工呼吸器の製造に協力中だ。エルバの生産は20年の第4四半期から始まる予定で、日本では21年にデリバリーが開始されると、マクラーレンジャパンではする。
当初399台の予定だった生産台数はさらにしぼられ249台に。これによって稀少価値がより高くなっている。価格は142万5000英ポンド(英のVAT=付加価値税込み)。日本では英ポンドで受注されるとのこと。
VAT込みで日本円に換算すると約1億9100万円。加えて、MSO(マクラーレンスペシャルオペレーションズ)に発注すれば、個々のオーナー向けに世界に1台しかないエルバを作ることができる。
小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。