男たちがロマンを追い求めた サハラ砂漠の記憶を込めて – renoma –
かつて“世界一過酷なモータースポーツ”といわれたダカール・ラリー。1978年に開かれた第1回レースを前に、創始者のティエリー・サビーヌは、フランス人らしい磊落さでこんな言葉を遺している。「扉を開くのは君だ。望むなら連れていこう」。灼熱のサハラ砂漠を縦断するのだから、危険なのは言うまでもない。それでも多くの者が、サビーヌの用意した扉を躊躇なく開いた。この事実にモータースポーツの本質を垣間見ることができる。人生を賭して追い求める、ロマンと憧れである。
そのロマンに共鳴したのがレノマだった。創業者のモーリス・レノマは、今でこそ当たり前になったデニム&ジャケットの着こなしをいち早く提案するなど、服飾界の常識を次々に打ち破ってきた人物。すでに世界を席巻していたレノマにとって、サビーヌの新たな挑戦は心に響くものだったに違いない。’80年代、レノマは参加チームへのスポンサードを通して、ダカール・ラリーに深く関わっていくことになる。その際に有名になったのが、レノマがチームのために提供したマルチポケットのブルゾンだ。
細かく区切られたポケットに、マップ、カメラ、ペンなど砂漠地帯での活動に必要なものを小分けして収納できる。この型破りなブルゾンもまた、レノマらしい大胆な発想から生まれたものといえよう。そして今年の春夏。男たちがロマンを追いかけたサハラ砂漠をテーマに、レノマの新作ショルダーバッグがリリースされた。一見してわかるように、デザインのモチーフとなったのはマルチポケットジャケットだ。またカラーリングについては、同様にレノマのアーカイブであるフィッシュネットバッグをモチーフにしたという。
使用した素材は、鹿革と同じ組織を人工的に作ったウルトラスエード。ほどよいハリとしなやかさを備え、タフで滑らかな風合いは鹿革そのものだ。このマルチポケットバッグを相棒に、男たちがサハラに追い求めたロマンに想像を巡らすのも楽しい。
ウルトラスエードのショルダーバッグ
マルチポケットのショルダーバッグは、収納力抜群のある大きめサイズと、身のまわりのものだけを入れられる小ぶりサイズの2タイプ。(大)7万9000円、(小)3万9000円。
サハラ砂漠の乾いた風を想像させる、しなやかで味わい深いウルトラスエード素材。牛革とのコンビネーションも絶妙だ。デザインのモチーフとなったマルチポケットジャケットは、アンディ・ウォーホルが中国旅行の際に愛用したことでも知られている。
問untlim 03-5466-1662
Text:Kunihiko Nonaka
2018年3月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)