“機械の美”を極めたクロノグラフ
時刻を知る機能に加えて経過時間を精密に計測できるストップウォッチ機能を備えたクロノグラフは“時間を操る楽しみ”が味わえる腕時計だ。手頃な価格の機械式モデルの存在から、ありふれた機構だと誤解されているが、本当は設計・開発・製造が難しい複雑モデルのひとつ。
現在も時計技術者たちが理想のクロノグラフの開発にしのぎを削っている。2012年に発表されたA.ランゲ&ゾーネの「ダトグラフ アップ/ダウン」はメカニズムの独創性、精密性、機能性、芸術性でその頂点に君臨する機械式クロノグラフ。
A.ランゲ&ゾーネが奇跡の復活を遂げてから5年後の1999年に発表され、時計愛好家を虜にし続けてきた「ダトグラフ」の後継モデルである。
アウトサイズデイトの2つの窓と2つのインダイヤルが完璧な正三角形を形成するドイツ的で端正な顔。
クロノグラフの計測中でも4時位置のリセットボタンを押せば瞬時に計測をリスタートできるフライバック機構。文字盤右側の分積算計の針が1分ごとにジャンプして動き経過時間が正確に読み取れるプレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンター機構。
主ゼンマイの残量を常に表示しクロノグラフ計測の正確性を保証する6時位置のパワーリザーブ表示。この卓越した機能以上に感動的なのが、ケース裏から鑑賞できるヒゲゼンマイやテンプまで完全自社製の「キャリバーL951.6」の息を飲む美しさ。
今の高級時計でこれほど機械美を極めたムーブメントは他にない。
A.LANGE&SÖHNE
ダトグラフ アップ/ダウン
パワーリザーブ表示機能の搭載に加え、デザインの完成度もアップした究極の手巻きクロノグラフ。プラチナケース。ケース径41mm。3気圧防水。問/A.ランゲ&ゾーネ 問03-3288-6639
Photo by :Hisashi Wadano
Sentence by :Kouji Shibuya
2013年9月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)