【藤崎聡子の一品×逸品ワイン】祝福をまとった 世紀の美泡

ムール貝のシャンパン蒸し:一緒に楽しみたいスパークリングを注いで蓋をし、貝の口が開くのを待つだけ。香りが欲しければ、薄くスライスしたガーリックとEXVオリーブオイルを最初に加えるのがポイント。塩は加えなくても十分味わえる。スパークリングワインの酸味のアシストが見事にさえる。

人が笑顔になれる最高のパートナーに泡モノがかかせない。グラスに注ぐ音からきっとワクワクがとまらないだろう。

日本より一足先にロックダウンが解除されたアメリカ。コロナの影響で市場が動かなかったシャンパンの消費量が激増し、他国へ供給する予定のシャンパンまでアメリカに流れ、その影響で市場のシャンパンが消えたといわれている。

今までなかった日常生活の制限がどれほどまでに人の心を閉じ込めていたのか。簡単なことだが消費量を見ていると、シャンパンに代表されるスパークリングワインは、幸せな時に飲みたくなるものなのだと実感している。

なかでも、今回ご紹介するのは世紀を超えてその幸せを表現してきたツワモノである。

ブリュット・シャンパンを生み出した「ペリエ ジュエ」。エミール・ガレが日本のアネモネを描いたボトルの誕生から120年を迎えるにあたり限定品が登場した。120年前と変わらないエッチングデザインに現代のテイストを見事に融合させたデザインである。

続いてイギリス。「ナイティンバー」の名称で土地が認定されたのは1086年。10世紀を超えるこの偉業から、2010年ロゼが誕生した。22年の今、ファーストヴィンテージが入手できる、これは非常に稀有なことだ。

最後は、ヒトラーから世界を救ったといわれているウィンストン・チャーチルの名を冠した「ポル・ロジェ」。チャーチルがこよなく愛したシャンパンメゾンが彼へのオマージュとして完成、ヴィンテージの個性を生かしながら、チャーチルが好きだった味わいを踏襲している。いずれも歴史の偉大さに乾杯、である。


熟成をたどる楽しみはブレンド力のバランスと酸味の明確な存在感
可憐、繊細、はかなさ、すべてをまとっているボトルの存在感は味わいへと誘ってくれる。穏やかな酸味はブドウの成熟のよさから、余韻ともう一口欲しくなる芳醇さは果実そのもののポテンシャルの高さ。シャルドネ、ピノ・ノワールのブレンド。シンプルだが、複雑の極みである。「ペリエ ジュエ ベル エポック 2013 120th アニバーサリーエディション」。750ml。4万1613円(ギフトボックス入り)。問ペルノ・リカール・ジャパン


ファーストヴィンテージ2010年が現存歴史を味わえる存在
イギリスのスパークリングワインとして価値を高めている1本。ピノ・ノワール75%、シャルドネ25%。なんといってもバランスのよさにうっとり。余韻に現れるブドウ本来の甘みも意識したい。穏やかな熟成香も魅力的。これは熟成用としても数本まとめて購入をお勧めする。ファーストヴィンテージが手に入る貴重な1本である。「ナイティンバー 1086プレステージキュヴェ・ロゼ2010」。750ml 。5万5000円。問TYクリエイション


シャンパン好きならば知っておくべき2013年の偉大さ
シャルドネ、ピノ・ノワールのブレンド。比率は門外不出。味覚を研ぎ澄ませ、想像力をかき立てながら味わいたい1本である。エレガントさ、余韻に残る繊細さ、そして果実のボリューム、芳醇さ、どれをとっても素晴らしいバランス。バック・ヴィンテージと比較できる環境にあるなら、ダブルテイスティングして味わってほしい。「ポル・ロジェ・キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル2013」。750ml 。4万700円。問ジェロボーム

2022年11月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

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