【CARTIER】スクエアケースに潜ませた 華麗なる意匠の企み

4月にスイス・ジュネーブで開催されたウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで、話題をさらったのが、ジャンピングアワー機構を備えたユニークなデザインを持つカルティエの「タンク ア ギシェ」だった。文字盤のほとんどをケースに覆われ、“ギシェ(小窓)”という名前が示す通り、時と分を表示する小さな開口部があるだけ。一見すると奇抜なデザインだが、よく見ると「タンク」のデザインコードのひとつであるアール・デコ様式のレクタンギュラーのフォルムに強調した時計であることがわかる。奇しくも2025年はアール・デコ博と呼ばれたパリ万博からちょうど100周年にあたるから、これほどふさわしいタイムピースはない。

その「タンク ア ギシェ」の源流にあたるのが、タンク ノルマル」。カルティエの資料によると、1917年に3代目当主ルイ・カルティエがルノーの戦車(タンク)、“ルノーFT-17”の轍から着想を得て、縦にやや長い4本の直線だけスケッチを描いたことが始まり。1919年には左右のラインを伸ばし、ラグとダイヤルの幅を揃えたタンク ウォッチの発売をスタートさせた。同年に第一次世界大戦が終結しているが、ルノーの戦車はその立役者であったことから、カルティエの「タンク」は自由と平和の象徴にもなっている。

以降、「タンク」はケースの縦横比を自在に変えて、さまざまなバリエーションを生み出してきた。とりわけルイ・カルティエが自ら愛用したのが「タンク」のデザインを再解釈し、1924年に発表された「タンク ルイ カルティエ」。レクタンギュラーのフォルムに、アタッチメントの角を落とした現代まで続く「タンク」を象徴するアイコンだ。レイルウェイミニッツトラック、サファイアカボション、古風なローマ数字、ブルースティール剣型針、パール状の飾りのついたリューズ、ダイヤル上のギヨシェなどメゾンの初期から見られるディテールをデザインコードとして守り続けている。つまり「タンク」のDNAをしっかりと受け継ぐ正統派のドレスウォッチということだ。

格調が高いゆえにムーブメントの多くは手巻きのムーブメントが収められる。クォーツムーブメントを搭載するタンクには、「タンク マスト」や「タンク ソロ」といったエントリーコレクションと区別するという意味合いがある。しかし近年では24mm×16.5 mmのミニモデルをはじめ、クォーツムーブメント搭載機が登場。そして今回ご紹介する「タンク ルイ カルティエ」のミディアムモデルにもクォーツムーブメントが搭載されている。

クォーツムーブメントを搭載することで、これまでになくスリムケースになったことに注目だ。両サイドのラインが際立つイエローゴールドケースにダークグレーのアリゲーターストラップを選び、薄く装着性を高めたこの「タンク ルイ カルティエ」はこれまでにないほどドレス感を漂わす。伝統の意匠を守りながら、スタイルをより先鋭化させた時計界のアイコン。それは普遍的でありながら、最も現代的なタンクウォッチといえるだろう。


タンク ルイ カルティエ
左右のラインが上下に伸び、ダイヤルとレザーストラップの幅がぴったりと合うケースフォルムを持つ「タンク」の直系モデル。このコレクションは手巻きムーブメントを搭載することが多いが、このミディアムモデルにはクォーツムーブメントを搭載。クォーツムーブメントを採用することでスリムなケースとなり、今年のトレンドでもある小型・薄型ケースモデルとしても注目だ。文字盤は通常のギヨシェ装飾ではなく、今年の新作のラージモデルにも見られるサンレイ仕上げが施される。クォーツ。18KPGケース。ケースサイズ33.7×25.5mm。188万7600円。㉄カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00

Photographs:Noboru Kurimura

2025年6月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

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