【藤崎聡子の一品×逸品ワイン】シャンパンが証明する シャルドネの 熟成と存在意義

ホタルイカ 入手可能であれば生のもの。まずはそのまま、次は塩とオリーブオイル。ボイルしたものもまずはそのままで。シャルドネの熟成した柔らかな酸味が見事に寄り添ってくれる

時間はすべてを成長させるわけではない。100本の長期熟成型ワインを検証して辿り着いたのは、構造を持つものだけが時間に耐えるという事実。注目したのはシャンパンである。

ワインは「化ける」と言われています。購入した時と、時を経て味わった時。その違いを体験すると、まるで成長しているかのように感じます。成長、つまり熟成。ワインは生きている――そう思わせる変化です。

しかし、熟成には必ずピークがあります。ピークを越えたワインは、複雑味を失い、果実味が抜け、かつての生命力を感じさせなくなる。あんなに生き生きしていたのに、こうも変わるのかと愕然とします。これは感覚的な話ではありません。この5年間、1980年代から2000年代前半の実力派、グランヴァンと言われるワイン約100本を、ワイン管理会社から取り出して実際に味わった経験からの実感です。中でも赤ワインは長期熟成といわれているものほどピークを過ぎていました。熟成は、必ずしも価値を増幅させるわけではない。

ただひとつだけ明確に違った存在がありました。シャンパンです。驚くほど美しいゴールデンカラー。より芳醇に、より奥行きを増した香り。単一品種であっても、ブレンドであっても。ノン・ヴィンテージでも、ヴィンテージでも。そこに差はなかったのです。

なぜシャンパンは“化ける”のか。注目しているポイントは酸味。シャルドネの存在です。この感覚を確信に変えてくれたメゾンが今回ご紹介するド・スーザ。家族経営、現在の醸造チームは創業者のお孫さんたちです。彼らはコート・デ・ブランの自社畑を深く研究、テロワール(土壌)とブドウ品種の関係を追求しています。

彼らのシャンパンをいただくとシャルドネの器用さと存在感、そして味わいの多様性がリアルに伝わってきます。そしてシャルドネってこんなにもいろいろな表情があるのか、ということも。できれば全アイテム揃えて比較テイスティングしてほしいレベル。それだけの価値があると感じています。


コート・デ・ブランのシャルドネは多層的な表情を持つ
平均樹齢60年から90年のシャルドネ100%。畑は銘醸地コート・デ・ブラン。濃密で熟度の高いブドウであることがファーストアタックから伝わってくる。シャルドネ100%と言われなければわからないかもしれない柔らかい甘さも存在する。酸味がこれほどまでに穏やかに成長していることにも驚く。【ド・スーザ キュヴェ・デ・コダリー エキストラ・ブリュット ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ2010】750ml ¥57.200 ㉄WINE TO STYLE

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SATOKO FUJISAKI[ワインスタイリスト]
ワイン専門誌を創刊、編集と広告マーケティングを兼任後独立。男性ファッション誌を中心にワインと料理のペアリング、レストラン紹介などを執筆。世界的なワイン漫画『神の雫』でもコラムを連載。レストランプロデュース、ワインリスト制作も手がける。ジャーナリスト最年少でオフィシエ・ド・シャンパーニュ叙任。

2026年3月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)

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