アラビアのロレンスも愛した二輪をアストンが復活

フレームはカーボンファイバー製となる

アストンマーティンがブラフスーペリアと組んで限定生産のスーパーバイク「AMB001」を開発中だ。ターボ装着の997ccVツインエンジン搭載で、すべてのパーツが専用設計という。

ブラフスーペリアは、読者のかたならご存知かもしれない、英国の伝統的なブランド。ジョージ・ブラフの手によって1919年に創業された。速度記録に挑戦するレコードブレイカー開発にも熱心だった。

高性能と堂々たる存在感ゆえ、とりわけ1920年代から30年代にかけて、裕福な、いわゆるジェントルマンライダーたちは、同社のSS80やSS100といったVツインエンジンモデルを好んだ。とりわけ有名なのは、アラビアのロレンスとして知られたT.E.ロレンス。7台所有していたという。

ブラフスーペリアはブランドとしては、1940年に消滅したものの、2013年に、商標権を獲得したオーナーが、SS100のコンティニュエーションモデル(当時と同じモデルを連続したシリアル番号のもとに製造)を手がけると発表した。

同時にフランスで「ボクサーデザイン」なる電気モーターサイクルなどを手がけるティエリー・アンリネット指揮の下、新しい時代のモデルとして、今回のAMB001のベースになった997ccVツインエンジンが開発されたのだった。

なぜ、アストンマーティンがブラフスーペリアと組んだのか。背景について公式な発表はない。このプロジェクトの旗振り役を務めているアストンマーティンのバイスプレジデントにしてチーフクリエイティブオフィサーのマレック・ライヒマン氏は「(レッドブルレーシングと共同開発するというハイブリッドスーパースポーツの)バルキリーの技術などを応用してすばらしい製品が作れる」としている。

180キロの車重を持ち、134kW(180ps)のターボチャージドV2を搭載したAMB001は、完全に100台限定生産とされている。アストンマーティンではフレームの設計や空力、さらにエンジン出力アップなどを自社の施設で実施。「こんなふうに開発されたモーターサイクルはないはず」と鼻息が荒い。

2020年6月からテストが始まったそうだ。「開発プログラムを順調にこなせれば、20年秋から生産に移れるでしょう」。ライヒマン氏はそう語る。製造は、仏トゥールーズにある新生ブラフスーペリアの工場で行われる。

価格は20パーセントの付加価値税を含めて10万8000ユーロ(約1300万円)だそうだ。世界でも屈指の高価なモーターサイクルになることはまちがいない。

デザインにはアストンマーティンのメンバーが参加しているもよう


Vツインエンジンには可変ジオメトリーを持つターボチャージャーが備わる

同じスペックスの製品がブラフスーペリアのブランドでも発売されるかは不明

小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。

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