【藤崎聡子の一品×逸品ワイン】真鯛のお造り×至高のシャンパーニュ
同じメゾンのシャンパンを同時に飲み比べると、シャンパンの本質とメゾンの考えが見えてくる。一年の終わりに、2020年限定ボトルを軸にして、真鯛をアテに奥深い美酒の世界を探究したい。
15年ほど前のことである。とあるシャンパンメゾンの最高醸造責任者から連絡があった。来日するので一緒にテイスティングするボトルをリクエストしてほしいと。さんざん悩んだ結果、ブレンド前のワインを飲み、それを公表している通りの比率で合わせて試したいとお願いした。元のワインがどう熟成すると、かくも違う味わいのシャンパンになるのか興味があったからだ。
結論。あまりの美味しくなさに愕然とした。同時に、ワインをテイスティングした時点で最終形がわかる最高醸造責任者の味覚に驚愕した。ブドウの可能性、ブレンドで生まれるパワー、熟成の見極めから完成した時の味わいが明確に見えるというのだ。そして悟った。私に残されているのは謎を解明すべく日々飲み続けることだけだと。
今回紹介するメゾン、アルマン・ド・ブリニャックはその研究対象である。彼らのスタイルは一貫しているから。全アイテムがマルチ・ヴィンテージ。ヴィンテージ・シャンパンになるものを複数年分ブレンドして熟成させる途方もないテクニックから生まれるのだ。ブラン・ド・ブラン以外は3品種のブレンドが定番だが、2020年限定ボトルは、初の試みとして2品種で完成させた。後世に語り継がれる存在の1本を軸に飲み比べると、ブレンドの違いが起こす魔法に開眼するはずだ。さらに、真鯛を3種の調味料で変化をさせながら飲めば、シャンパン通に近づけるかな。
アルマン・ド・ブリニャック ブリュット ゴールド
2006年に6年間の構想を経て誕生したアイテム。ピノ・ノワール40%、シャルドネ40%、ピノ・ムニエ20%。熟成から生まれる果実の濃厚さはブドウ本来のポテンシャルがいかに高いかを物語っている。ブリオッシュの香りはゴールドならでは。750ml 4万9500円。ギフトボックス付き5万5000円。
アルマン・ド・ブリニャック ブリュット スペシャル エディション ジャパン2020
シャルドネ55%、ピノ・ノワール45%、日本市場のみ展開の限定ボトル。2020年にリリースするにあたり逆算して5年以上の瓶内2次発酵を経ている。熟成のバランスと複雑味はメゾンならでは。タイミングを見極めた見事なテクニックだ。750ml 5万5000円。ギフトボックス付き6万500円。
アルマン・ド・ブリニャック ロゼ
初リリースは2008年。ヴィエイユ・ヴィーニュのピノ・ノワールを最後15%ブレンド、口に含んだ瞬間に広がる果実のボリュームは余韻にも可憐な香りとして残る印象である。ピノ・ノワール50%、ピノ・ムニエ40%、シャルドネ10%のブレンド比率。ロゼはギフトボックス付きのみ販売。750ml 8万8000円。
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ADB JAPAN Tel.03-6228-4458
2020年11月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)