【藤崎聡子の一品×逸品ワイン】時代はスクリューキャップ主義へ
自然環境の変化からコルク生産の将来が危ぶまれる昨今。再生資源にも成り代わるスクリューキャップにシフトしていくワイナリーがこれから主流になっていくだろう。
コルク樫から作られるコルク栓。植樹して20年ほどで成熟、バージンコルクが誕生する。さらに9~10年でセカンドコルク、でもまだ凹凸があるため使い物にならない。そこからさらに10年、サードコルクになると品質が安定してくる。つまりは植樹して40年、ようやくコルク栓が世に出回るのだ。ただ環境、ワインの増産など世界が大きく変化しているため、コルク樫そのものが減少している昨今である。
それに成り代わってきているのがスクリューキャップ。20世紀の終わりからニューワールドに多く見られる。スクリュー=安いというイメージだが、これを採用する生産者の考えは違う。コストではない。「ブショネ※を出したくない」のだ。ブルゴーニュで1本10万超えのワインも生産するメゾンが「高額なワインほどスクリューにするべき。自然の産物ゆえ、もしブショネだったら申し訳ない」と3千円前後のワインより高額ワインからスクリューに変える予定だ。味の絶対的保証、である。
そう考えるとこの形状のワインは味わいに失敗がないから食事とも安心して楽しめる。今回紹介するのはすべてスクリューキャップ、ニュジーランドのピノ・ノワールとシャルドネだ。熟成もゆっくり進んでいるので複雑な味わいが見いだせる。3本同時に比較すると食とのペアリングのポイントがそれぞれ違うことがわかる。この「同時に」が大事。自分の好きが紐解けるから。残ったらキャップをして二日目へ。この気軽さもスクリューならでは、である。
バックヴィンテージとともに比較する楽しみも
2012、14、そして15。今日本で購入できる他のヴィンテージがあるのも白ワインでは希少価値が高い。2015は酸味に若さ以上に熟成の豊かな香りが際立つ。食事の素材を引き立たせる器用さも。ピラミッド ヴァレー ヴィンヤーズ「ライオンズ トゥース カンタベリー シャルドネ2015」750ml 1万3750円。
熟成することから生まれる力強さが余韻にも現れる
ピノ・ノワール特有の可憐でチャーミングな酸味がエレガント。空気に触れることでどんどん化けていく。アタックに濃厚な味わいを持つ食事と合わせたい。2012、13、14ヴィンテージもあり。ピラミッド ヴァレー ヴィンヤーズ「エンジェル フラワー カンタベリー ピノ ノワール2015」750ml 1万3750円。
潜在能力の高さをダイレクトに感じさせてくれる繊細さも
丁寧に生育されたブドウならではのフレッシュさが楽しめる。香りもグラスに注いだ時からどんどん広がっていく。寝かせた旨みを感じる食材にぴったり。2011、12、13、14ヴィンテージもあり。ピラミッド ヴァレー ヴィンヤーズ「アース スモーク カンタベリー ピノ ノワール2015」750ml 1万3750円。
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2021年3月「HORLOGERIE]本誌より引用(転載)